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井上ストラテジー

2008年10月14日 (火)

081014コメント

     催促相場が催促したものが、「金融機関に対する措置」であったのか、

「金融機関の株価に対する措置」であったのかがこれから試される。

     確かに金融機関に対して採りうる措置は全て採った。

     しかし、金融機関の株価に対して採りうる措置はまだある。

 欧米市場の上昇について今更詳述することもないが、米国世論云々の前にG7で公的資金注入を「行動計画」として約束した。これによって、先週述べたように「G7の後押し」を利用した最短のシナリオで事は運んだことになる。やはり大統領選などは待っていられなかった。

 “施策に逆らって市場が下落する”という歴史的な出来事であった「AIGショック」の時と違い、昨夜、素直に市場は反応した。しかし、問題はこの上昇の後、先週10/9に書いた時間軸でいう4の部分である。ここにおいて冷静に見ていかなくてはならないのは、先週10/10に述べた金融株の動向である。

 「昨日、モルガン・スタンレーは上昇したではないか」と言われる方もいらっしゃると思うが、これは邦銀の増資完了によるものである。つまりは、「公的資金が資本に入るリスク=株主責任が問われるリスク」が大きく減少したと市場が考えたことによるもので、個別要因である。では、JPモルガンは上昇したか?昨日は結果的に0.8%高と小幅な上昇にとどまり、ザラ場はマイナスの場面が目立ったのである。市場が大きく上昇するなか、少し気味の悪い下げであった。S&Pの業種別指数は10業種全てが上昇したが、上位にはディフェンシブな業種が目立ち、「金融」は6位と微妙な位置である。これからは先週紹介した、メットライフなどの保険株そしてJPモルガンなどの株価動向をやはり注意していかなくてはならない。「GSE2社の呪縛」は市場に根が深い。思えば、リーマンのことを夏前から「達磨落しの一番下」と書いてきた。それでも、当局が破綻させる可能性は実際には低いと思っていた。悪い表現をしてしまったと少し思っている。現在は、公的資金が資本に入ることによって、大手金融機関がここから弾き出されることはなくなったと考えられる。しかし、繰り返しになるが、問題は、上場は維持されても株主責任が問われることのリスクである。この部分は容易に解決されるものではなく、少なくともファンドや機関投資家の新規資金の振り向け先に金融株の現物は選ばれることはないと考えておいたほうが無難であろう。

 本日は新聞休刊日であるが、日経新聞が宅配号外を出すというので昨夜取材を受けた。弊社にはまだ届いておらず、その存在は分からないが、もし、コメントが引用されていたとしたら、真意は以上である。

2008年10月10日 (金)

081010 コメント(続き)

 日経平均のSQ値は豊田通商(8015)がストップ安の状態でどうやら8000円を微かに割り込んだ水準となったようである。日本市場はQUICKの端末などで「米政府は9日、公的資金による金融機関への資本注入の本格的な検討に入った。ブッシュ大統領は10日午前(日本時間11日夜)に金融危機への対応について声明を発表する」との報道がされたことによって、落ち着きを取り戻したかのように見えるが、今朝方配信した“二つの愚策”のうち特に後半の「金融株のカラ売り禁止解除による暴徒の増加」によって、昨日のコメントの③の部分の幅が小さくなることを覚悟しなくてはならない。なくなる可能性もある。昨夜のカラ売り禁止解除後の動きはとにかく凄まじかった。繰り返しになるが「公的資金が資本に直接注入されても、株主責任を問われるのではしょうがない、というGSEの呪縛」が暴徒化したカラ売りの背景にある。そして、それはしごく尤もである。

 そして、このことは④の期間において上値の重さに繋がってしまう。もう今までの経緯から「再度の金融株のカラ売り禁止」の施策は採れないのであろうか?そこまでヘッジファンドに気を遣う必要が一体どこにあるのであろうか、私には理解できない。

 大和生命が破綻した。80年代後半は「保険がとれなくても本社ビルの家賃で食べていかれるのではないか」と羨ましがられた会社である。有価証券の評価損が大きな破綻の理由という。さきほどブルーンバーグの取材にも答えたが、心配なのは年金である。別に同社の年金運用のことではなく、このレベルにまで日経平均が下落することによって、生保等に運用を委託している年金基金がますます運用を中止し、解散の方向を歩むのではないかという懸念である。無論1週間、1ヶ月、3ヶ月という短いタームで示現する材料ではない。しかし、今回の生保の破綻は年金運用においてもギリギリのレベルに指数が到達したことを意味しているのではないかという危惧を私に抱かせる。

 「群臣嘉賓燕をする」という鹿鳴の詩から名付け、外国人を思いっきりバブリーにもてなした鹿鳴館跡地を買い取った徴兵生命保険が大和生命の前身。オフサイトミーティングを国有化後にも高級ホテルで行ったAIGが叩かれている現在、完全に日米の金融機関にとって反面詩である。

081010米国市場コメント_概況

     “二つの愚策”により暴徒が増加。

     引け2時間で400ドルの急落。

  

ポールソン財務長官が公的資金を金融機関へ直接注入することを示唆した発言を行ったことが伝わったのは昨日の日本市場の後場。一時的に上昇した相場がその後下落した市場の反応が正しかったことを昨日のNY市場は証明してしまった。

一つ目の愚策、「ポールソン発言」。“真意”ではなく“品位”を疑う。昨日書いた新聞の取り上げはNYタイムスが「公的資金の投入検討」の見出しをつけてくれたのに財務長官が勇み足、しかも「今回可決された金融安定化法案の金額には資本投入分も含まれていると解釈している」との仰天発言である。それはない。そんなことが許されるのは、クチを尖らせた言い合う子供だけである。前回の下院否決後、選挙区にトンボ帰りした議員が選挙民に理解を求めた部分に公的資金投入など絶対に入っていない。金融安定化法案とは別にきちんとした手順を踏んでセットでの有効性を訴えるのが筋であるのにこの発言。米国はSECの時価会計基準の二転三転のようなことをしておきながらも、このようなこと(ポールソン発言)は絶対に許さない国民性がある。つくづくカードの切り方が下手だと思う。

二つ目の愚策、「金融株のカラ売り規制解除」。月曜のNIKKEINETでもラジオNIKKEIでもジョインベスト証券でのセミナーでも述べたが、不安が的中してしまった。遂に恐怖指数は60の大台を超えて63.92まで上昇して引けた。モルガンスタンレーをはじめとして幅広く金融株がカラ売りを浴びた。NYSEの出来高は20億1400万株。一昨日に続いて20億株を超えたが、過去のデータから1割が信用売でカラ売りはそれ以上であると考えると、実株の売買は決して膨らんではいない。あっ、と思ったのが保険株の動き。メットライフなどが急落。最大のAIGが実質国有化されたわけで、2位以下がカラ売りを浴びるのは当然なのだ。ここで、今まで行ってきた施策の一つが大きくクローズアップされる。それはGSE2社への対応によって“既存の株主”が一定、というよりも膨大な責任を負ったという事実である。「上場維持か否かが焦点」と述べたが、結局責任の取らされ方は「りそな」ではなく「長銀・日債銀」に限りなく近い。また、「全ての金融機関が救われるという訳ではない」とのポールソン発言。“救われた”ところでGSE方式の責任の取らされ方をする以上、金融株にカラ売りの連想が働くのは当然。「金融株のカラ売り禁止解除」は新たな暴徒を増やしただけである。アメリカ、カナダ、中国以外のカラ売り規制実行国を列記。英国、オランダ、フランス、ドイツ、スペイン、スイス、ロシア、韓国、香港、台湾、オーストラリア。

尚、SGX(シンガポール)の日経平均先物は8090円で現在サーキットブレーカー発動中(井上)

2008年10月 9日 (木)

081009コメント

 協調利下げが行われた。そして、市場の反応は予想通りであった。昨日より日本でも「金融機関への資本の直接注入」の話が報道されている。私は昨日、大統領選など市場は待っていられないのではないかという趣旨のことを述べた。昨夜のNYもやはり最後の30分で大きく下げたように先物、現物を使った荒っぽい“売りで儲けることに慣れた手”が主役の相場は完全に実需から離れてゲーム化している。そして、その実需にあるものがファンドの売りだけならば、ゲームはますます乱暴なものとなってしまう。

 時間軸で整理してみよう。

①(現在)金融安定化法案、協調利下げなどは銀行の資金繰りという現在の不安心理の元凶に対して何も寄与しない。米国の公的資金の銀行への資本注入が決定されるまでは売り方安心相場が続く。金融安定化法案が決まったばかりでその買取りも行われていない段階での決定は世論を配慮しても有り得ない。大統領選もある。→②米国の公的資金の銀行への資本注入が決定→③買戻しによって株式相場一旦大きく上昇(LIBOR3ヶ月急低下)→④その後、恐怖指数(ボラティリティー)低下とともに景気と需給の綱引きといういつもの相場(ボックス)に回帰

という時間軸である。

 そして現在の最大のテーマが「②がいつ?」であるかなのだが、これについて、「年明け、新政権で」という見方が一般的なのに対して、私は「市場の暴力に耐えられなくなる」ことによって早まるのではないかと考えているのである。

 現在、米国当局が通常の手続きを踏んで法案を通すには、金融安定化法案の経緯を見る限り再度混乱を招く可能性が高い。世論に問う前に“後押し”が必要である。それは例えば「G7で米国の公的資金の銀行への資本注入を論議」などという大きな新聞の見出しである。決して「G7で金融安定への協議」などというものではない。これによって「諸外国からこれほど突き上げられているが、実際に混乱は米国金融が招いたものである。金融安定化法案という懲罰的なものに、銀行への資本注入というセーフティーネットをつけることによって初めて動揺が収まる。あくまでもセットでの運用が必要なのだ。」というメッセージを国民へ送ることができる。以前「2つのクライマックス」か何かで、GSE2社への資本注入が行われるであろうと予想した時に書いたが、WSJやNYタイムズなどの紙面に一斉に取り上げられたとき、その確度は高くなる。日経新聞の週末の見出しも要注意である。そして、市場(コンセンサス)は②の期間をグッと手前に引き寄せることになるのである。②の時期を前提とした①の時間を謳歌している現在の“売りで儲けることに慣れた手”がそこで止まる。

 果たして②が行われたとして③はあるのか?という質問に対する答えは「YES」である。LIBORは銀行債と国債(銀行保証と国の保証)のスプレッドであると考えれば必ずやそのスプレッドは縮小する。また、市場はもう当局に残された手だてはない、つまり催促する“アメ”が何もないことを充分に認識している。アメがない以上催促相場は起きない。そして④の時間帯へと移行するのである。

 米国当局は世論に問う背中を強く押してくれるものを待っている。

2008年10月 8日 (水)

081008コメント

昨夜はジョインベスト証券のオンラインセミナーをたくさんの方に見て頂いたようで感謝しております。ありがとうございました。初めてのことで、非常に戸惑い、途中で何を言っているか自分で分からなくなること度々でした。講演会で人の顔を見てお話しするのとの違いを実感しました。人と会って1時間半話すのは大丈夫ですが、留守電に1時間話し続けるような不思議な感覚でした。お聞き苦しい点が多々あったと思います。お詫びします。

 しかし、昨日のセミナーで「大統領選もあり、“公的資金の銀行資本への直接注入”には時間がかかるのではないか」というお話をしましたが、昨夜の米国、欧州市場を見ていて、そんなことは言っていられないことを実感しました。完全に市場はゲーム化しております。それもかつてない乱暴なゲームです。英国で政府中央銀行に対して資本注入の検討を依頼している金融グループがあるとの報道がされましたが、先週書いた欧州の金融機関の資金繰り悪化の高まりは急速に高まった、というよりも実質的に銀行間の取引は機能していません。米国の大統領選など市場は待ってくれない状態です。

 欧米の協調利下げが行われても、その後、先週の金融安定化法案可決後の市場の動きの二の舞となる可能性が高いことは既にコンセンサスとなっております。G7で協調体制が確認されても、米国がCPの買取りを発表しても、市場は「金融機関にとって有効なことでも分かりづらい小手先の施策」に対しては暴徒化した売りで対応することに慣れてしまいました求めているものは「公的資金の銀行資本への直接注入」の一点です。これに対して、現在は「世論の支持を得るまでには時間がかかる」との見方が支配的ですが、昨夜セミナーでお話ししたNYSEの時価総額の減少を前に本当に世論が反対するかどうかは分からない、というよりも、以前書いた「世界の3大アレルギー」のひとつである「米国の株安」が効いてくるのではないかと考えます。先日も書きましたように現在はストラテジーでなく現状分析を書くにとどめておりますが、繰り返しになりますが、暴徒化した市場が求めているものがただひとつで、それを抑えるために米国政府当局は迅速な決断を迫られる局面にきたと判断します。(申し添えますが、ストラテジストでこの「公的資金の銀行資本への直接注入」を次のポイントと述べられているのは、現在、三菱の藤戸さんを含めまだごく少数で、時期についても来年と述べられている方が多いようです。あくまでも私見としてお考え下さい。)

 昨日セミナーに寄せられた質問は私に送られてくるそうなので、お答えできるものにはお答えしていこうと思っています。猫ですが、私は猫も好きです。あまりにも子供の頃に刺されたのでハチが嫌いですが、それ以外は苦手な動物、昆虫、魚等いません。魚も飼っていますし、カブトムシを幼虫から成虫にかえすことにここ8年連続で成功しております。猫アレルギーは正確には猫上皮アレルギーです。猫は寄って来てくれるのですが、私の目はかゆみで真っ赤になり、目の中の下にある透明な管が腫れ上がって白目に出てくるという恐ろしい顔になってしまいます。因みに小林の実家は先日までペットショップを経営していました。

 他に金融に関する質問がいろいろあったと思うのですが、今はっきりと思い出せません。「犬、猫」と「東南アジア」と「G VS T直接対決」だけが妙に記憶に残っています。

2008年9月30日 (火)

080930米国市場コメント

先週木曜日に当ブログで米国市場が買い戻しによって戻りを試す展開というシナリオの修正を述べたが、昨日の午後のラジオで先週のシナリオのミスリードを詫びシナリオの訂正を述べた。週1回の出演であるが、これほど早く番組に出たいと感じたことはなかった。ラジオで述べたときの先物は午後にアジア株とGLOBEXの軟調な展開を受けて11870円レベル。昨夜のイブニング、シカゴで先物は11215円まで下落してしまった。

 先週木曜日、シナリオ変更の理由として、「出来高の急減という直接的な理由」の他に、「もうひとつの問題は、日本のバブル期の最終局面のように銀行に公的資金が直接投入されることを、次に市場(報道)が催促し始めているということであるが、これが実現される可能性は現状では非常に低い。この点において不良債権の切り離しとは関係なく金融機関(銀行)の倒産がまだ続くという見方を現状否定することはできない。実際にスプレッド市場の落ち着きはまだ見られず、銀行間の疑心暗鬼が生む貸し渋り(資金融通拒否)が現在の米国では改善されていない。そして、今回の施策が大きな財政赤字を生むことからドル安論議が高まっており、法案が可決されても、そのことが大きく株価を押し上げる状況にはないと言わざるを得ない。」と述べた。この部分は、金融安定化法案可決後にも市場が下落する可能性を述べたのであるが、昨夜の米国市場の777ドルの下げは、『「金融安定化法案が否決されたショック分」+「その後の不安の一部」』に分けて考えなくてはならない。そのため、再提出→可決というシナリオが今晩からテーマとなれば「金融安定化法案が否決されたショック分」は戻ることになる。そして、その後は「その後の不安の残りの部分」を市場が材料として吟味する時間帯に入ってくると思われる。それは、現在高い位置にいる、LIBOR3ヶ月金利と米国株のオプションのボラティリティーである恐怖指数の動向を見ながら判断しなくてはならない。法案再提出、カラ売り期間の延長後の更なる手として現在可能性が高いと客観的に判断されるのは、以前にも述べたが、利下げ(しかも、現在のドル不安を考えると「協調利下げ」)である。

 日本市場も、本来であればドレス期待があったであろう本日、大きな下げとなることは必至である。日中の動きも信用や先物整理に伴い、「朝安、その後前場戻しを試すも、午後12:30~1:00までに再度底値を取りに行き、その後やや戻るも動かなくなり大引け」という急落時のパターンがボラティリティー高く起きる可能性がある。参考までにサーキット・ブレーカー基準を載せる。

1)TOPIX

次の(a)から(c)までに掲げる場合には、先物取引を停止することができるものとします。

(a)当取引所が当該先物取引の状況に異常があると認める場合

(b)当取引所が取引監理上、当該先物取引を継続して行わせることが適当でないと認めた場合

(c)当該先物取引に係る売買システムの稼働に支障が生じた場合等において、当取引所が売買システムによる取引を継続して行わせることが困難であると認める場合

・ 当取引所は、限月取引の直前の約定指数(特別気配を含みます。)が、基準値段から一定幅を超えて上昇(又は下落)し、かつ、当該限月取引の理論価格から一定幅を超えて上方に(又は下方に)乖離している場合、15分間取引を一時中断することとします。

基準値段                基準値段からの変動幅   理論価格からの乖離幅

750 ポイント以上1,250 ポイント未満     100 ポイント超          20 ポイント

ストップは上下200ポイントです。

2)日経平均

基準値段からの変動幅が上下1000円 且つ 理論価格からの乖離幅が上下200円              

に該当した場合、15分間の取引の一時中断措置が取られます。 

ストップは上下2000円です。  

2008年9月25日 (木)

080925米国市場コメント

 今週のラジオで米国ダウは買い戻しで11750ドルくらいまでは一時的に戻れるのではないかと述べたが、早くも修正が必要な状況となってしまった。金融安定化法案を巡る議会とのやりとりが注目されているが、「総論=賛成、各論=反対」で議会を通らなかったことは日米ともに私の記憶にない。法案は議会を通ると思われそのことに問題はないが、私が今週の相場で最も驚いているのが、米国NYSEの出来高である。先週末(金曜日)は金融安定化策の発表により大きく相場が上昇したこととSQの影響もあって29億株にまで達したが、その後、今週の3日間の出来高は12.7億株、11.5億株、10.8億株と閑散の一語に尽きる。19銘柄のカラ売り規制解除後に8月いっぱい続いた夏枯れ相場の時期に戻ってしまった。

 1月のSGショック、3月のベアーショック、そして7月の下げと、その度に施策がうたれた後に出来高はそれなりに増加したのであるが、今回は一気に減少してしまった。この点についてかなりヒアリングをしたのであるが、「基本的に買い戻し玉はあっても、(ロスカット等に触れた)急がなくてはならない玉は先週末のようには出ていない」とのことである。これから粛々と行うだけで時間的に急いでいる状況にないようである。これまでの1日の出来高の十分の一以上が信用売り・カラ売りによって出来ていたこともあり、今回の規制が逆に出来高を小さくしてしまっている面もある。

 また、もうひとつの問題は、日本のバブル期の最終局面のように銀行に公的資金が直接投入されることを、次に市場(報道)が催促し始めているということであるが、これが実現される可能性は現状では非常に低い。この点において不良債権の切り離しとは関係なく金融機関(銀行)の倒産がまだ続くという見方を現状否定することはできない。実際にスプレッド市場の落ち着きはまだ見られず、銀行間の疑心暗鬼が生む貸し渋り(資金融通拒否)が現在の米国では改善されていない。そして、今回の施策が大きな財政赤字を生むことからドル安論議が高まっており、法案が可決されても、そのことが大きく株価を押し上げる状況にはないと言わざるを得ない。

 この閉塞感はすぐに日本市場にも伝播している。配当取りを終え、今月末のドレス期待もあるが、来週からの10月相場も閉塞感の強いボックス相場になってしまいそうだ。8月中旬以降出来高が小さくなった市場で説明力があったのが、結局、先物と裁定の動向。日経平均の週末値の上昇・下落と弊社が計測している、金額ベースでの「3社先物+裁定」の動向は先週のタフな相場でもやはり同じ方向であった。日経平均が▲293円で両者合計金額は▲320億円。この相関はもう二ヵ月間も崩れていない。そして、昨日、一昨日については3社以外の外資系証券の225ザラ場(ラージ)の動きも大きく市場に影響を与えている。昨日などはNEが大きく傾きを見せたのはザラ場のJNET(クロス)とイブニングのラージであり、ザラ場ラージの動きは他社の影響が大きかった印象を受ける。そして裁定取引であるが、6月のメジャーSQに続いて9月のメジャーSQで大きく残高を減らし、その後もさすがに先週金曜日は増加したものの、全体の印象としては買い残を増加させる動意に欠けている。10月といえば米国の投信決算が集中する月。さすがに基準価格を大きく上昇させている投信が少ないため、タックス・ロスと呼ばれる損出し圧力は例年に比べて強くはないが、どちらに転んでも買いの材料ではない。ヘッジファンドの決算を控えてまたも株式現物に対する動意の小さな相場が展開する可能性が高い。

2008年9月19日 (金)

080919本気の封じ込めが始まる

     耳を澄ませば「シャキーン」「シャキーン」

世界中で刀を抜く音が聴こえる。

 昨日の夕刊に出ていたことを先ほど友人との電話で知った。いつもこの記者の内容を纏め上げる力には感服するが、ブログをご覧頂いている方は、あの前提に「それまでの『上からだけ取る(上からだけ叩く)』というストラテジーを昨日の寄り前に終了させた」ことがあることをご理解頂けていると思う。

 しかしハードな週であった。特に朝の4時からNYの引けまでのボラティリティーはかつて経験したことのないほどだ。始まりは先週金曜日。リーマン株が買い戻されてダウ160ドル急伸。AIGのブリッジローン決定前日は150ドルの急伸。翌日は200ドルの再下落。そして今朝は400ドルの暴上げ。。。連休中を除いてこの間の私の睡眠時間は合計で6時間。さすがに引けたら会議室で少し寝る。そして思う。今週はいずれ振り返ったときに「歴史的な週」となるであろう、と。

 刀は英国、ロシアでも抜かれた。「催促相場」が求めていたものは、2月まではアメ(利下げ)、3月は金融機関の自己資本拡充、そして5月以降がカラ売り規制であったことを述べ続けてきたが、やっと、それがなされた。リーマン破綻時の株式市場の下げは別にショックではない。破綻したのであるから株式市場が下げるのはおかしくない。しかしAIGの資金繰りがついたのに大下げをしたのはショックであった。米国市場は基本的に素直である。施策や経済指標に対する反応は例え一時的であれ、素直であり続けてきた。それがAIGでの下げ。。。ショックを受けて当局がやっと本気になり、そして刀を抜いた。初めから当局は市場が催促しているものをきちんと認識していたのである。少し感無量であった。

今回、なぜベアースターンズを救済合併させたのにリーマンは潰したのか、カラ売り規制をここまで引っ張ったか。全てはヘッジファンド業界に対する弱腰な米国当局の姿勢にある。リーマンになくてベアーにあったもの。それはプライムブローカレッジである。ヘッジファンドは証券会社のプライムブローカー業務からカラ売りの玉を借りるとともに、ファンドのお金の大半はトラスティー(信託銀行と考えてください)から実はプライムブローカーである証券会社に移っているのである。日本の投資信託でいえば、信託銀行にお金があって保全されていると投資家が思っていても、実際はカラ売りの担保または現物決済の関係上、証券会社にその資金が移管されているようなものである。証券会社が潰れた場合に混乱の中その資金がどのような扱いを受けるかを考えれば、潰せない理由がお分かり頂けるであろう。そして、ヘッジファンドとは、何かを売っているから“ヘッジ”ファンドなのだということである。7/16以降一瞬だけSECのコックス議長のコメントとして流れた「カラ売り規制銘柄の拡大」が消えたのも、ヘッジファンド業界の猛反対であった。米国で2大プライムブローカーといえば、GSとモルガンスタンレー。世界的にみてもこの両巨頭の地位は揺るがない。そして、ポールソン財務長官はそのGSの出身者である。

 今回のパニックは昨日も書いたが、つい2週間前のドル高時施策を採っていれば避けられたものである。リーマンも潰れることはなかった。小林も書いていたが、業績悪化やサブプライム関連の評価損が拡大して潰れたわけではない。資金繰りがつかなかっただけである。疑心暗鬼になって資金が融通されなくなり破綻した日本の金融機関と同じ。そして、今度はベアーになくてリーマンにあったものであるCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)が新たな火種となってしまった。

そして、ドル安、商品高である。このふたつはなんとしても押さえ込み、金利政策のボールを当局は絶対に放してはならない。そのためには仕事をしていないCFTCの尻を叩くべきである。ここ1週間の金先物の売買状況を出させるだけでも充分な効果がある。7/5の日経新聞朝刊のサミット要旨から7/16のカラ売り規制までの間に商品市場に何が起きたかを以前書いた。思い出して欲しい。商品の中で一番初めに反応するのは何であったか、何を齧っていたネズミと私が最初に反応したかを。あの文章を再度読めば現在の金市場を私がどう考えているかお分かり頂けると思う。金に関するレポートは今週に入っても出され続けているらしい。一緒に銅、ニッケルについても書いて欲しいものだ。ここで金を買おうかという気持ちになっている人は、ITバブルが弾けた後、2月から4月の間に再度情報通信を買う気になった人かもしれない。ホリエモンショックの後に再度小型株を買った人、今年に入って中国株ファンドを買った人、古くはNTTの2回目の政府放出に応募した人、つい最近テレビで原油とIT株相場のチャートをなぞって説明した人も、皆同じカテゴリーに分類される。「すごろくがあまりうまくない人チーム」

ドル安の流れを食い止めるために、繰り返しになるがFRBはバランス・シートの拡大に躊躇しては絶対にならない。パンパンに膨らませるつもりで行うべきである。思い出されるのは5年ほど前に当時FRBの理事からCEA(大統領経済諮問委員会)の委員長となったバーナンキ現FRB議長が、日銀のバランス・シートについて痛烈な批判を繰り返したことである。小泉政権下で「プライマリー・バランス」という言葉が本来と違う意味で使われていた頃(現在もそのまま)、金融学会の招きで日本において講演した際に、氏は「流通している日銀券額以内に国債発行額を抑えるという、法律でもなんでもない非公式ルールがあることはナンセンスだ」と切って捨ててみせた。バランス・シートがリスクを抱えた際の恐さをきちんと認識していたのである。さすがにハーバード大学に1600点中1595点で入学した人間はすごいと関心しきりであった。今、氏はそれを実行すべきである。パンパンに。麻生さんもイザとなったら白川さんに言って同じことをするかもしれない。もっとも麻生さんが非公式ルールの存在を知っているかどうかは微妙であるが。。。

 話を戻す。今回のカラ売り規制以外の施策について。

6カ国中央銀行(米除いて5カ国)の総額1800億ドルのスワップ協定。高評価。これは民間金融機関の資金繰りに加えて、上記国債発行にも大きく寄与する。日本がこの協調に加わるのは初めて。欧米がクローズしているアジアタイムを実質的に日本はカバーすることになるが、白川さんには「いざとなったら外貨準備をつぎこみます」くらいのことを言って欲しかった。注目すべきは当然、ドル・円の直先スプレッド。3ヶ月物で1ドルあたり80銭以上というのはそのままドル不安を示している。これが50銭程度まで下がれば大成功。しかし、このスキーム、昨年秋にECBとスイス中央銀行が行ったもの。てっきり無くなったものと思っていたが、まだ残っていたことにビックリ。欧州の民間銀行とスイスの民間銀行はUBSの資本調達で名乗りを上げたのがどこであったかを思い出すまでもなく当然恐ろしく仲が悪い。しかし、中央銀行同士は無論別。円の次のキャリー通貨であるスイスの存在はやはり大きい。

400ドル上げの材料となった、ポールソン財務長官のRTC(整理信託公社)構想。まだ、正式なコメントは聞いていないが、この機関が無くなっていたことも知らなかった。因みに潰さずに会社存続前提の政府機関でRFC(復興金融公社)というのが大恐慌時に設立されたのが始まり。

尚、さきほど中国ファンドのことを書いたが、先月に書いた「2つのクライマックス」で述べた中国の施策として、利下げに続いて印紙税の免除、銀行株の買い支えなどが行われる見込みとの報道がされている。ヘッジファンドではH株等を使ったショート・ポジションを持っているものも多く買い戻しによる一時的なリターン・リバーサルの可能性がある。しかし、本国市場は現物市場。大型の政府放出株によって指数が形成されており、日本で例えるとすれば公募価格割れのNTTやドコモだらけの市場であり、持続性には疑問が残る。

一昨日「長くてよく分からない」というコメントを頂きました。すみません、はっきり言える部分とぼかす必要がある部分があります。もともと「何を買うべきか、売るべきか、上がるか、下がるか」を言うために始めたものでもなく、ただの市場月旦ならぬ日旦程度に思っていて下さい。頂くコメントを読んでいつも思うのは、やはり勉強熱心な個人投資家が多いのだということ。負けずに勉強しなくてはと思います。今日は敢えて今まで使ってきた言葉を散りばめました。すらすらお読みになった方は今まで長いことおつきあい頂いた方だと思います。本当に有難うございます。アクセス数を見ると始めた頃の数字を思い出してビックリすることがよくあります。物事には全て時間軸がありますが、筆圧をできるだけ維持しようと思います。深謝。

2008年9月18日 (木)

080918クラッシュ

     今までとは明らかに違う。昨夜のNYは完全なクラッシュ

     「催促相場」が催促してきた物をSECは与えた。

     「上からだけ取る」ストラテジーの終了。そして静観する。

昨夜の米国株式市場は完全な「クラッシュ」。この言葉を当ブログで使うのは初めてである。クラッシュは短期金融市場での急激なボラティリティーの高まりやスプレッドの動揺も伴う。

6/19の「先物ヘッジ宣言」以降のストラテジーにおいて、特に8/12のカラ売り規制解除後のストラテジーとして「上かららだけ取る」ということを述べてきた。それは7/16の19銘柄のカラ売り規制発動後にここで有効策として書いた「銘柄数の拡大、期日の延長」が行われずに8/12を迎えてしまったことに起因していた。これについて、「催促相場」が「催促」している本質はGSE問題やリーマンのことではなく、「SECがカラ売り規制という需給に刀を抜く姿勢を示すことである」とも述べた。

 そして、昨夜、その刀は唐突に抜かれた。これはさすがに全員一致で金利政策の変更を見送った翌日であり、「緊急利下げ」を行うわけにもいかない状況の下、昨夜の動きを危機的状況(パニック・クラッシュ)であると認識したということである。催促相場が催促したものをSECが与えた以上、私の「上からだけ取る」というストラテジーはここで終了することとする。そして、静観する。

ここからは現況の分析。

 しかし、カラ売り規制の遅れによって、当局は株式市場だけでなく、CDSや今朝モーニングサテライトでも紹介されていたTEDスプレッドをも安定させる責務を負ってしまった。まずは、FEDのバランスシートを大きく拡大させるとともに自身のキャッシュ確保を図らなくてはならない。緊急の短期国債の発行などというレベルではなく2011年以降にその権限が与えられることとなっているFEDの銀行準備金に対する付利行為(詳細はお調べください)の前倒し解禁などが必要である。市場がFEDのバランスシート自体を疑問視することは避けなくてはならない。これは、再度のドル不安を招くことから、繰り返しになるが、絶対に避けなくてはならない。つい最近までのドルが堅調であった際にカラ売り規制を行っていれば、この問題は回避できたはずである。

 また、CFTCによる監視姿勢を明確に打ち出すことによって商品市場が再度上昇することを抑え込むことも必要不可欠である。金利政策を打つための素地は確保しておかなくてはならない

 最悪のシナリオは今回のカラ売り規制が株式市場の動揺を止められないことであるが、その際には、先週述べた数少ない打てる手である、「欧米同時利下げ」などの金利政策や自動車産業への資本投入もほんとうに瞬間的な効果しかもたらさない可能性がある。次の一手は「080722米国市場コメント_大恐慌の亡霊が笑ってる」で述べたアップティック(ダウンティック)ルールの復活しか残されていない。

日本市場は本日、信用の投げが加速するものと思われる。望まない形で13500円から上で作った信用買いの残高は圧縮されるであろう。また、もうひとつ懸念としてあるのが、リーマンの先物の建玉である。昨日の日経新聞の建玉数字で気がつかれた方も多いと思うが、先週金曜日(SQ日)の建玉で12月限ラージ買い方筆頭がリーマンの+15747枚である。(ミニ先12月限はラージ換算▲23.9枚の売り)。リーマンの建玉について、顧客分は他の証券会社に建玉を移管して通常の売買が行われるが、リーマン自身の自己ポジションについてはクリアリング機構が指定した業者を通じて反対売買のみを行うことが決められている。この建玉のうち、どれくらいがリーマンの自己ポジションなのかは無論分からないが、今までの建玉の推移や、また(先週の急落時にここで解説した)オプションの傾きを持ったうえでの先物売買動向を見てきた市場参加者のなかには「救済されることを前提としたアウトライトな買いであったのでは?」という意見が根強く、昨日の日中の日本市場の弱さの一因と考えることを否定する根拠はない。(因みにリーマンのオプションの建玉(10月限)は、117プット▲1枚、120プット+55枚買い、125プット+819枚買い、120コール▲79枚売り、125コール+199枚買い、127コール+1600枚買い)

2008年9月17日 (水)

080917「48時間」「24時間」

 営業日数日でここまで市場のコンセンサスとは変わるものなのであろうか。といっても株価動向の話ではない、金融政策のことである。先週末にリーマンについて書いた際に「利下げ」のことを述べたが、先週水曜日に日経クイックに書いた際の私の文章には「誰も言っていないが・・・」と前置きが必要で、クイックの人が後からLIBOR(ロンドン)の先物の数字を送ってくれて「微妙に可能性が出てきていますよ」と慰めてくれたほどであった。

 それが、昨夜のFOMC開催直前の市場調査では75%以上の米国エコノミスト、ストラテジストが「利下げ」を見込んでいたという。私の考えは先週来書いてきたように「金利変更なし。据え置き」であったが、昨日、全員一致で「据え置き」を決定した後の米国市場では、それらのエコノミストによるFRBバッシング・コメントが吹き荒れた。米国の金融市場で現在「48時間」というキーワードが流行っている。リーマンを巡る当局主体の話し合いが行われた時間のことを指すこの言葉をして、「FRBは48時間が招いた大きな混乱から何も学んでいない」という主張が主である。

 この主張は明らかにおかしい。金利政策は何も金融機関救済のために行われるものではない。金融政策は基本的に金利という水準の変更を差す場合が多いが、量的な部分も含めて政策であり、FRBは6%にまで瞬間跳ね上がったFFレートを受けて2日間で1400億ドルもの資金供給を行っており、量的な政策によって刹那的な金融不安のショックを防いでいる。

 そして、今夜7兆円を超えるAIGの資金決済を迎える。今度は「24時間」である。今朝、日本市場の寄り前にNYタイムス紙(電子版)の「FRBがAIGに対して850億ドルのブリッジローンを行い、80%程度の株式をワラント形式で取得する予定」と報じ、CNBCがその前に報道していたローン金額と同額であったことから信憑性が高いと市場では言われている。また、何の根拠か「投入なし」という根強い意見を主張する向きもあるが、こればかりは分からないし、判断やコメントを入れることもできない。丁半バクチを薦める訳にはいかない。

 どちらにせよ、これで、リーマンとAIGという喫緊の課題に答えが出され、GSに加えてモルガン・スタンレーも1日早めて決算を発表したこともあり、次のステージに市場は向かう。

 次の注目点はリーマンの話し合いの後半部分で持ち上がった、次の金融不安に対処するために金融機関が7兆円を超える資金を拠出しあうというスキームに対して今後当局がどのような態度に出るかではないかと、これまた勝手に思っている。今回、個別案件であるリーマンに対しての公的資金の投入を当局は行わなかったが、このファンドに対する資金供給の可能性は充分にある。現在の7兆円という金額は今夜のAIGの資金繰りを引き合いに出すまでもなく、やはり小さい印象を受けてしまう。

 そして、もうひとつの注目点はリーマンのCDSである。昨日も書いたが、CDS市場は全体で7兆円とも一説では9兆円とも言われている。サブプライム関連全体の損失を100兆円まで意識し始めた市場にとってその金額が大きいか小さいかは見方が分かれるところであろうが、1金融機関の決算においてリーマン絡みのCDS評価損の数字が悪影響を及ぼし、市場に伝播する可能性は捨てきれない。

 尚、話は逸れるが先月「2つのクライマックス」で述べたもうひとつのクライマックス、中国の利下げが昨日ひっそりと行われた。やはり軸足は「景気」に置かれた。

2008年9月16日 (火)

080916リーマンコメント

     「えっ?メリル」

     当局主導ですごいスピードで決着するもリーマン救済されず。

 13日からの米国金融市場のリーマンを巡る話し合いは連日夜を徹して行われた。そして、結局達磨落としの一番下は場外に弾き出された。山一證券と同じく4番目は救われなかったことになる。

「公的資金を入れる選択肢はなかった」とポールソン財務長官は述べたが、話し合いの後半は次の金融連鎖危機に対応するためのファンドへの民間金融機関の拠出金額の話し合いが行われていたようである。

ベアースターンズの買収を主導した当局が今回リーマンでそれをしなかった背景を考えると、「これで、現在とり沙汰されている個別の金融機関の危機が遠のくわけではない」ということと、「ベアースターンズと違いリーマンはプライムブローカー業務の比率が大きくない」つまり、ヘッジファンドへの影響という点をベアースターンズの際には充分考慮したものの、今回はその影響を限定的と判断したことが推測される。

とにかく、今回のリーマンの破綻でふたつ残されたものがある。それは、前述のAIGや欧州系を含む数社の破綻懸念であり、もうひとつはCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)である。このCDSは逆にベアースターンズよりもリーマンの方がはるかに大きい。この部分の個別金融機関への影響が報道されてくるのはこれからである。緊迫度は増した。

 先週水曜日に日経クイックで、その後、ここでも述べた米国の金融緩和の思惑が週末を経て急浮上している。昨日FFレートは瞬間的に6%まで跳ね上がった。目標値である2%の3倍というこの数字が昨日のショックの大きさを物語っている。昼前に事前の200億ドルに500億ドルの追加供給を決定したことによってFFレートは結局落ち着きを取り戻したが、そこまで資金を取りにいかなくてはならなかった金融機関があったことも事実なのである。そして、一方のFF金利先物市場で11月物は1.78%まで下落している。それまでの期間における0.25%の利下げを織り込んだのである。

 本日のFOMCで利下げが行われるという見方は少ない。しかし、先週末述べたような緊急、そして協調という選択肢を何時とってもおかしくない事態となったことは確かである。ただし、その効果についても先週末に述べたとおりで一時的なものとなる可能性が高い。GSE、リーマンが決着した現在、次の焦点は金融政策ではなく、「また達磨落しが行われるのか」である。「カラ売り規制」の刀はまだ抜かないであろう。「上からだけとる」というストラテジーで来たが、とてもここで逆のストラテジーを述べる気にはならない。例え明日相場が上昇したとしても、とてもそれがトレンドとなるとは思えない。しかし、緊迫度が増した際にはなにが起きるか分からないことも事実。全ては時間軸で考えなくてはならない。3月、7月がそうであったように、そろそろ、ポジションを持たない時間を持つとか量を絞るという時間帯に入ってきているとも考えられる。

2008年9月12日 (金)

080912米国市場コメント

 以前述べた米国2つのイベントのうち“達磨落しの一番上”GSE2社への公的資金投入のスキームが決まり、“一番下”のリーマン問題が風雲急を告げている。私はこのリーマンの買収先決定について、当局主導で非常に早いスピードで決着するのではないかと予想している。理由はふたつ。リーマンの前倒し決算発表で増資への言及が不思議なほどなかったこと。二つ目は、後述する残された二つの切り札を切るには現在はタイミングが合っていないということである。

 二つの切り札のひとつ目は無論、「カラ売り規制」という需給面に再度刀を抜くことである。そして二つ目は、まだ誰も言わないが「利下げ」である。カラ売り規制については、本当に危機的状況にまで催促相場が進展しない限りその刀を抜くことはない。実際に金融株の買い戻しは規制解除後も続いている。当局が刀を抜かないで市場が落ち着くことを望んでいることは言うまでもない。

 そして、二つ目の利下げについては、市場に対して、再度「アメ」を提示することになるが、これは商品市況が下落する一方で世界的に景気減速感が台頭している現在、瞬間的なインパクトはあるであろう。そして、その際に単独でなく、欧米同時利下げさえあり得ると考えている。しかし、今回のFOMCは16日。あまりにも時間がない。そのために、リーマン問題は時間をかけずに早いタイミングで処理する必要がある。

 この「利下げ」、瞬間的な効果はあるものの、持続性には疑問符を打たなくてはならず、市場はその後再度軟調に転じるかもしれない。しかし、今回の利下げは“数ヵ月後”に効いてくる。何に効いてくるかというと、「債券」に対してであろう。「債券」は、まずは一旦買われたとしても、今回でアメがなくなり、私が考えているように、来年初から米国景気の底割れ懸念が後退すれば、一転して材料出尽くし感が広がると予想する。さんざん述べてきた、現在の「商品」「債券」「株式」におけるキャッチボールの順番が変わるのはその時である。つまり、「利下げ」は債券に与えられた「安全な時間」の終わりの始まりを意味していたということにいずれ市場は気がつくのである。

 断りを再度入れるが、“数ヵ月後”の話である。

余談になるが、切り札とはならないが、もうひとつ打つ手として考えられるのは米国自動車業界に対する資金供給である。

2008年9月 9日 (火)

080909偏差値ランキングデータ:「総合化学」編

  本日は「総合化学」のランキングデータを掲載します。

「総合化学」は、東証33業種分類を独自に分類した化学業のサブセクターとなります。現在、東証33業種分類の化学業は120を超える銘柄群で構成されていますが、このままの状態で業種内における特徴を分析することは難しく、事業内容が比較的類似する銘柄群に再グループ分けすることで分析しております。(「総合化学」、「合成樹脂」、「その他化学」の3つに再分類)

添付されている表は、直近1ヶ月リターンを降順で並び替えておりますが、当該セクターにおける特徴としましては、原材料高の影響などから業績悪化(=EPSの減額)に見舞われてPERが上昇し、割安度偏差値が悪化していく中で、割安度偏差値の小さい銘柄の方が相対的にパフォーマンスが良いという結果が出ています(最もパフォーマンスに対して説明力が高かった)。投資理論的観点から割高に見える銘柄を買うことには抵抗感がありますが、投資指標上では割高に見える銘柄のパフォーマンスの方が良好だったのは、裏を返せば、前述の“業績悪は既に株価に織り込み済み”が故に起こった現象と受け止めることも出来きるのではないでしょうか。今後は、原油相場の下落により、悪材料として織り込まれていた原材料高が解消されて、見直し買いに繋がる可能性もあります。

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080909米国市場_日本株コメント

(午前中に配信する予定がココログのメンテナンスにより配信時刻が遅くなりました。)

 大幅な上昇となった昨日の日米市場であるが、その上昇の中身は7月中旬の上昇時の真逆であった。

 カラ売り規制が発表され、7/16、7/17と2日間でダウが485ドル上昇したのに対して、日経平均が43円しか上昇しなかった(翌週になって先物の買戻しによって日経平均も上昇した)際に、初めの2日間の相場つきの違いを、カラ売りが溜まっていた市場とそうでない市場で説明した。当然溜まっていたのが米国市場で、溜まっていなかったのが日本市場であった。

 昨日、日本市場は銀行株、不動産株、その他金融株の動きから明らかなように、ヘッジファンドによる現物株の買い戻し、NT倍率の巻き戻しが起きた。弊社が計測しているファクター・リターンにおいても6月以降パフォーマンスが良かった順バリのファクター・リターンが急落し、同時期不冴えであったボラティリティーのファクター・リターンが急上昇した。完全にファンドのオフセット時の動きである。

 一方で米国市場は先週の動きと基本的な流れが変わっていないという印象を受けた。先週も、(昨日も)書いたが米国市場の先週の下げはファンドの現物の売りが主導したものであり、金融株のカラ売りが主導したものではない。その証拠に先週金融株指数は上昇している。昨日も金融株は買い戻しによって上昇した。

 日米市場の違いが明らかに表れたのが、日米の債券のイントラデーの動き、及び米国の素材関連株の下落である。昨日、日本の債券先物は1円36銭の急落となった。安いところでは更にそこから38銭下もある(グラフ掲載)。債券についてはこのブログで実は2回しか大きな予想をしていない。それは4月の後半に行った「債先が132円台まで一旦下げる場面があるであろう」というものと、6/26の「前夜、FOMCによって“債券を買って安全な時間”が与えられた」というものである。株のストラテジーはさておき(ごめんなさい)、債券のこの予想は的を得ていたと思う。そして、昨日の動きは4/25と同じくファンドのオフセットの影響である。

一方で米国債は日中、一旦売られたものの買いが優勢となり、先週までの“安全な時間”にすぐに戻った。もし、株をカラ売り、債券をロングしていたのであれば、4月の株式上昇時(買戻しが主導)のように債券は売られたはずである。また、米国の素材関連株が蚊帳の外であったのも先週と流れが変わっていないことを教えたと考えている。

 ここから導かれるストラテジーは、現物のオフセット(カラ売り銘柄の買戻しとロング銘柄の売り)が終われば、再度日本市場は上値の重い展開となるであろうということである。通常オフセットは3日~5日続くが、この動きは冒頭に挙げた業種の寄り付き、及び寄ってから15分の板を見ていれば続いているか、終わったか判断がつく。既に本日「銀行」は息切れしているものが目立つ。もっとも、「銀行」は個人、ディーラーも多く参加するため、1日だけではなかなか判断がつかないが、「不動産」「その他金融」と併せて見ていれば方向性は測れる。これらが止まれば確実に上値は重くなる。また、この春までは毎月3日間~5日間、これらの業種の買戻しは見られたのであるが、ここ数ヶ月は期間、上昇幅ともに規模が小さい傾向にある。ファンドの規模が縮小したこともあり、あまりショートが溜まっていないのである。つまり、昨日の日本株の戻りは確かに買い戻しであるが追随する買戻し圧力は大きくないと予想する。080909_2_3

2008年9月 8日 (月)

080908偏差値ランキングデータ:「医薬品」編

本日は「医薬品」のランキングデータを掲載します。添付されている表は、直近1ヶ月リターンを降順で並び替えております。

先日ご紹介した食料品と同様に、医薬品はディフェンシブ業種ですが、業種内におけるこの1ヶ月間の特徴は食料品のそれとは異なります。新薬の開発・認可あるいは副作用問題など個別銘柄固有の材料が株価を動意づける原因となることが多い業種ですが、それ以外にも、各偏差値データとパフォーマンスの関係を分析してみると、パフォーマンス格差を付ける要因の一つに「テクニカル要因」があるようです。添付している表の偏差値データは最新のもの(8月末現在)ですが、7月末偏差値データを使用して8月に示現した個別銘柄のリターンを回帰分析してみると、「順バリ度偏差値」の小さかった銘柄のパフォーマンスのほうが、大きかった銘柄のそれよりも相対的に良好であったという結果が出ております。実は、この傾向は長期間にわたって観測されており、つまり「逆張り戦略」が有効な業種であるといえます。この傾向が続くと仮定すると、今月業種内で相対的にパフォーマンスが良好となることが期待されるのは、添付された表の「順バリ度偏差値」が小さいグループに属する銘柄となります。0908

080908先物等コメント

 先週末、9/4、9/5の先物、裁定及びオプションの手口。

9/4、225(以下、指数)▲131.93円、3社合計、225先物、TOPIX先物金額換算で約500億円の売り超であるが、NEの225売りが目立つ。そして、もっと目立ったのが、CSの225先物ラージ・ザラ場商い、ゼロ(!)(!)。このことから推測できることは只ひとつ、利用プレイヤー数である。これ以上は書けない。裁定は小幅売り越しか。

リーマンは225先物ラージで▲20億超の小幅売り越し、注目のプットは120P:1400枚弱の買い、125P:101枚の売り。

9/5、指数▲345.43円、3社合計、225先物、TOPIX先物金額換算で約350億円の買い越しであるが、CSが225先物で130億円超、TOPIX先物で300億円程度の買い超、他2社は225先物、TOPIX先物共に売り超。前日お休みの効果?結果的に成功か?裁定は方向分からない。国内1社が解消売りを出した可能性があるが、他社動向から全体の傾きは測れず。

リーマンは225先物ラージで170億円の買い越し。プットは120P:200枚弱の売り、125P:53枚の売り。

080908イントラデー・コメント

 先週の米国市場の下落はカラ売りよりもファンドの売り、(実需の売り)によるものであることを述べたが、心理的に大きかったのは前週からのイントラデーの動きであったと考えている。まずは、GDPの上方修正。寄りつきから上昇し、その幅は200ドルを超えたものの、引け後のデルの決算発表によって、翌日は一転して170ドルを超える下げとなってしまった。一国のGDP上方修正が1企業の決算によって帳消しとなってしまったのである。ここまでは、イントラデーの動きは大きく方向性が変わることはなかったものの、先週の火曜日、グスタフの影響が軽微であったことが分かり、いきなり前日比+250ドルまで上昇したダウが結局▲26ドル安で引けたことは大きなショックであった。私自身、数日かけて上昇しそれからダレると思っていたものの、その“数日”が、ものの1時間で終わってしまったのである。

これは、「GDP上昇、デル下落」が市場に「心理的な上値の重さ」を植えつけたがゆえである。そして、この「グスタフ一過、されどイントラデー急落」が木曜日のミニ・ショックの引き金となっていると思われる。

 今夜の米国は当然上昇して始まると思われるが、ここから数日はイントラデーの動きを、私のように夜中じゅう追ってくださいとは言わないまでも、翌朝でもよいのでチェックすることをお勧めしたい。その後の指数の上昇、下落を示唆、予兆する動きが示現すると思われる。

 

080908米国市場コメント

米国当局がGSE2社に対する救済案を発表した。先週の土曜日(9/6)の米国株式概況の最後に触れたWSJの記事が正しかったことになる。内容については今朝の日経新聞で報道されていることもあり詳しく述べないが、8/21に書いた「080821二つのクライマックス」のその部分を振り返ってみる。

「二つのクライマックスが近い。ひとつは米国GSE2社への公的資金投入、そしてもう一つは中国の金融緩和である。早合点しないで欲しい。だから株が上昇するということを述べたいわけではない。 GSE2社への公的資金投入は避けられない。“その日”が近づいていることは確かである。根拠は証券会社や金融機関のレポートではなく、雑誌、新聞、他のメディアがこぞってこのことを連日報道しているということ。先週末のバロンズ誌を皮切りに今週に入りNYタイムズ紙、WSJ紙がこぞって「いつか?幾らか?」を論じている。米国の施策は金融機関のレポートではなくその他のメジャーな報道(世論の高まり)を受けて行われるきらいがある。これらの報道を受けて現在の米国市場が“催促相場”となっていることは確かである。ファニーメイの“その名のとおり”マッドCEOがこの公的資金の投入を拒否(否定)しているが、その姿はバブル崩壊後、保身と責任追及を恐れていた邦銀幹部の姿にダブる。「資金導入を市場は織り込んでいる」と言っても、それは債券の世界の話である。リーマンのレポートが出た直後からGSE2社の債券がデフォルトをおこすことはないと私は主張してきたが、そのスプレッドは現在完全に落ち着いている(無論、弁済が劣後する債券等は含まない)。つまり、デット(借り入れの部分)については公的資金の投入を織り込んでいる。問題はエクイティー(資本、株式)の部分である。既存の株主価値がどうなるのか(といっても今朝書いているように時価総額は今年に入り既に90%毀損しているが。。。)ということである。もっと、有体に言えば、「上場が維持されるのか、されないのか」の1点である。日本のバブル崩壊後を思い出してみよう。金融不安が最終的に加速したのは、“半分政策銀行”と思われていた、日債銀、長銀が破綻し、異例中の異例である「上場即時廃止、整理ポスト行きもなし」という措置が取られたときであった。1ヶ月後に提示された、信用取引の決済株価は無論、ゼロ円。この超法規措置によって金融不安はクライマックスを迎えたのである。カラ売りをしていたヘッジファンドは大喜びで、「次はどこか?」と信用不安のある銀行をカラ売りしまくったのである。これが劇的に潮流が変わったのが、2003年5月のりそな銀行に対して公的資金が投入された(自己資本を国内業務に必要な基準である4%に回復させるため)ものの、債務超過ではないという理由で上場が維持されたときであった。ゴールデンウイークに「公的資金投入」が決定されたこともあり、休み明けに出社すると外国人のヘッジファンドからたくさんの「やった!」というメールが届いており、苦虫を潰しながら読んだことは忘れられない。あの時に当時の担当大臣であった竹中平蔵氏が日銀総裁と喧嘩してでも上場を守ったことが、その後のヘッジファンドの買戻しを招き、日本市場は大底をうった形となったのである。現在のGSE2社の立場がちょうど当時の日債銀、長銀に該当する。もし、上場廃止となれば、「半分政府系の金融機関でさえ上場廃止となったのであるから、他の民間銀行の破綻は加速する」という見方に流れは傾いてしまう可能性が高い。このようにGSE2社に対する施策において鍵となるのは、金額ではなく、上場が維持されるのかどうかであるということだということを意識してこれからの推移を見守る必要がある。そして、時期であるが、昨日は「GSE幹部と当局がミーティングを近日中に持つ見込み」というニュースが流れたが、一方で夏休みが明けてレーバーデー(9/1)を過ぎた頃ではないかという見方も浮上している。遅い。それまでに“催促相場”が小さなクラッシュをもたらす可能性も排除できないというよりも起きる可能性が高いと考える。そして、立ち返るが鍵は「上場維持か否か」である。“催促相場が催促しているものは何か?”それは決してGSE2社に対する公的資金の投入ではない。需給に対してSECが再度、刀を抜くことなのである。つまりは「カラ売り」に対する規制である。それまで催促は続く。竹中氏が毅然として「債務超過に陥ってなければ上場は維持する」と言い放ったことは「カラ売り」という需給に対して刀を抜く姿勢を日本が見せたことであったのだ。」

結果的に、やはり公的資金の投入は「遅かった」。9/1のレーバーデー以降にずれ込んだことによって、先週米国市場はミニ・クラッシュを引き起こしてしまった。ここまで時期が延びたのは、民主党大会、共和党大会の閉会(大統領候補の確定)を待ったのであろう。日本のバブル崩壊時に比べての対応の迅速さを評価する報道が多いが、最悪であった日本の対応と比べても何も意味は無い。日々の市場に触れている者にとって、その対応は、今回も「危機的状況になって初めてとられた」と感じるのが正直なところである。

「りそな」のように上場が維持されることとなり、まずは金融株の買い戻しが起きる可能性が高い。そして、次の注目は以前にも書いたようにリーマンの資本増強である。しかし、先週の下げは金曜日に述べたように、決してカラ売りが煽動したものではない。ファンドの実需と言ってよい売りが招いたものである。事実先週米国の金融株は逆に買い戻しによって上昇している。つまり、今回の措置、また、リーマンの資本増強に関するニュースという2つの当面のヤマを超えたとしても、それが米国株の上昇の基点となるとは現在判断することは全くできない。あくまでも、市場が催促しているものは、繰り返しになるが、「カラ売り規制」という需給に対して刀が抜かれることである。

日本市場もこの2つのヤマによって一時的に指数が上昇することがあっても、その持続性には大きな疑問符を打つ。信用の重いゾーン、期日、ファンドの決済、、、ストラテジーに何も変化はない。今回のGSEに対する施策が1回目の売り場となるのでないかと考える。そして、ひとつこれから注意して見て欲しいことを述べる。それは米国市場のイントラデーの動きである。

2008年9月 5日 (金)

080905偏差値ランキングデータ:「食料品」編

本日は「食料品」のランキングデータを掲載します。添付されている表は、1ヶ月リターンを降順で並び替えております。(紙面の関係上、2分割しております)

食料品は代表的なディフェンシブ業種ですが、世界景気の減速懸念の高まりを受けて、株式市場が低迷する中、食料品のパフォーマンスは他の業種と比較して相対的に良好なものとなっており、ディフェンシブ業種の面目躍如といった感じです。業種内におけるこの1ヶ月間の特徴ですが、プラス要因に働いたのは「順バリ度偏差値」が最も大きく、続いて「需給偏差値」(以上、偏差値が高いほどパフォーマンスが良い傾向)、マイナス要因として働いたのは「変動性偏差値」、そして「割安度偏差値」です(以上、偏差値が高いほどパフォーマンスが悪い傾向)。ただ、注意して頂きたい点は、この1ヶ月で見ると割安度偏差値はパフォーマンスにマイナス寄与として働いておりますが、3ヵ月、6ヶ月といった長めの期間では有効性があります(あくまで業種内におけるリターン格差の説明力が高いということ)。もっとも、市場全体から見れば、割安度が高い業種ではありません(ほとんどの銘柄の割安度偏差値が市場平均50を下回っている)。0905_1 0905_2

080905米国市場_日本株式コメント

 さすがに昨日の米国の下げはミニ・ショックである。ダウの下げ幅344.65ドルは今年4番目の記録。しかし、6月初の「原油高・失業率ダブルショック」や昨日と同じようにADPによって毎月相場のボラティリティーが高まったことを思い出してみても、雇用悪化懸念の強さに市場が常にナーバスになっていたことが分かる。そして、経済指標の芳しくない数字の発表と重なるとそれは加速してしまう。思えば、3月、6月、そしてこの9月と3の倍数月に発表される経済指標がよろしくない。それによって6月のFOMCの利上げが見送られたことは何度もここで述べた。

 そして、それらの月がまた証券会社の決算発表にあたっており、このことも不安心理を拡大させる要因であったといえる。雇用(及び経済指標)と金融機関の信用収縮問題の重なり。そして、今回はヘッジファンドの整理売りもだらだらと出されていると聞く。45日ルールというと8/15までの相場の重しとして意識されたが、その解約申し込みによるポジションの整理は9月中旬まで続く。昨年は以前述べた8/8~8/10のマーケットニュートラルファンド・ショックと翌週のサブプライムショックという特殊な要因が見られたが、一昨年は8月10日過ぎから9月の初旬までそれまでのリターン・リバーサルが大きく見られた。これはポジションの整理(買っていた銘柄を売り、売っていた銘柄を買い戻す動き)によるものである。今回はその他に単なるロング系ファンドのだらだらとした売りが散見されている。これは日米両市場においてである。

 さすがに昨夜の下げがきつかったので本日の雇用統計は昨日のADPがガス抜き効果として働き、世界連鎖は招かずに、一時的に来週初にかけて戻すのではないかという見方もある。しかし、それでも、また急落があるのではないかという不安は拭えない。注目されるGSE2社に対する対応であるが、数週間前にメリル、シティーの「年内公的資金の投入の必要なし」というレポートが発表されて一時的に上昇したが、そのことが、本当に「投入なし=株式上昇、投入=下落」という図式を意味しているのであれば、例え投入されても市場にとってプラスの効果とならないことになってしまう。(無論、上場維持か否かが最大の焦点であり、現在のGSEが2003年のりそな銀行と同じ立場であることは以前述べたが。)

 また、大統領選挙前で金融当局が自己の判断で革新的な施策を打ち出しづらい状況であることも確かである。今回の下げは決して大きなカラ売りが主導している状況ではない。カラ売り方に以前のような勢いはない。これが、3月、6月との違いではある。どちらかというと、現物の商いが薄いなか、上記のようなファンドの売りが重い相場を演出しているといえる。それでも、以前も述べたように、催促相場が催促しているものは何かといえば、それは「需給、言い換えればカラ売りに対する対策」である。そして、(これも述べたが)3月、7月とかなり市場が危機的な状況になってからやっと米国当局が手を打ったということがこれまた、再度の下落を逆説的に予想してしまっているのである。

日本市場においても、相場は完全に上値が重くなってしまった。日経平均を0.9で割ることを以前に書いたが、現在のその数字は13500円丁度のレベルであり、本日は信用の追証の話が飛び交っている。“やや重かった”13500円から14000円のレベルの重さが一段と増した。そして、テクニカルな指標を見ても日柄調整の期間がまだまだ必要なことを示唆しているものが多い。「上からとる」ことだけを考える時間がまだ続く。

2008年9月 4日 (木)

080904先物_コメント

 乗りかかった船で先物コメント。昨日の3社の先物(金額換算、225先物、TOPIX先物、弊社試算)は800億円強の買い越し。225はNE、UBSの傾きは買い、CSは売りと跛行。TOPIXはNE売りのCS、UBSは買い。

 昨日225ラージ(ザラ場)において3社以外の他社(弊社が裁定ビッグプレイヤーと考える5社を除く)で傾きが見えたのは、昨日もリーマンとJPモルガン。リーマンは▲120億円程度、JPは▲70億円弱の売り越し。一昨日の売り超金額と比べるとリーマンは25%程度、JPは30%程度に売り超金額は圧縮。

両社のオプション(プット)手口、リーマン120プット190枚買い超、125プット553枚売り超(買い方見えず)。JP120プット356枚買い超、125プット397枚買い超、130プット85枚買い超(売り方見えず)。。。尚、メリルは115、120、125の各ストライクプライスでプットの売り傾きが見られた。

 先物コメントが多くて恐縮ですが、集計作業も連日かなりの時間を割いてやっております。それはよいとして、先物3社金額と裁定金額増減を合計(弊社試算)したものと日経平均の推移を表で載せます。連動性が窺えると思います。(9/2、9/3は裁定増減を含んでいません。)

080904_225

2008年9月 3日 (水)

080903日本株コメント

 昨日の「上からだけ取るというストラテジーに変更はないものの、数日ノーポジ」と述べた背景について述べる。

 まずは、あの時点での私の考えは「今日は昨日米国市場が休日であったこともあり、先週金曜日の大きな買いのリバーサルは月曜に続いて起きるものの、基本的に閑散な相場が継続するであろう。そのため、ここでショートを作っては、米国市場が原油市場の下落によって上昇した場合に入り口を間違えたポジションになってしまう可能性があり、米国が一時的な上昇をした後に「上から取る」のでいいのではないか」というものであった。

 しかし、昨日は先物市場が2時過ぎに急落を演じることとなった。先物市場での仕掛けのタイミングなど事前に分かることは不可能であるが、これによって相場のボラティリティーが上昇したことは確かである。また上で「一時的な上昇」と書いた米国株の上昇であるが、まさか、その上昇が数日ではなく、ものの1時間とは思わなかった。寄り付きの水準を見て「これでは落ちるのも早いな」とは感じたが、それにしても200ドル高がマイナスとは。。。これはGDPの上方修正時にも寄りから高かったもののザラ場上昇できずに、その後の時間外デル決算で翌日下落したことから早降りの連想が働いたものと思われる。シカゴの高値はこの時点で12950円。結果的に昨日のストラテジーについては、「(日本時間2時過ぎから)失敗→(原油安、米国株急上昇、シカゴ12950円で)成功→(その後の米国株下落で)?」というものとなってしまった。

 それでも、昨日の下げの印象は強い。日経平均の下げ幅は月曜日の方が大きかったものの、印象としては昨日の方が強く残ることとなる。そして、金曜日の304円上げの印象は非常に薄いものとなってしまった。信用買い残が先週少し減少したが、これは金曜日にヤレヤレの損切りが行われたのではないかと推測する。現物、信用の買い意欲は小さい。SQにむけてやや静かに相場が推移しているときこそ逆に仕掛けに注意するべきなのかもしれない。ただし、昨日の急落時にヘッジ売りはきちんと出たことから、連日昨日のような売りが来て相場が下値を割り込む動きとなると予想することも危険である。3月までとの決定的な違いは現在、現物のポジションを落とすという“現物に関わる需給”が希薄であるということだ。

080903昨日の先物コメント

 昨日の2時からの下げは確かに驚いた。米国が一昨日休場であったことを考えれば先物の仕掛けという一般的な見方に逆らう気はない。

 しかし、一説に言われている、NEの仕掛けには?というよりも、「違う」と思っている。昨日の相場の前フリはやはり先週金曜日の日経平均が300円を超える上昇となった日にある。この日、ウオッチ3社の225、TOPIXの買い超(金額換算、弊社試算)はおよそ3000億円と8月以来なかった大きなものであった。先物主導での上昇時に都度コメントを入れてきたが、8月にそれが大きく表れたのが8/18(225、+146円)、8/25(225、+212円)の二回であるが、弊社試算の買い超金額は、それぞれ1600億円、1100億円であった。また、両日の裁定買い残の増加金額はやはり弊社試算で950億円、1100億円となっている。合計してみると、8/18、2550億円。8/25、2200億円である。

 先週来、「裁定買い残が減少することによる指数下落シナリオ」に対して、断定することは危険であると申し上げてきたが、先週金曜日の裁定買い残は株数で1億1711万株もの増加となり、弊社試算の金額増は2300億円と非常に大きなものとなっている。つまり、金曜日は先物3社+裁定で5300億円もの金額を記録していたのである。

 

 ここのところ、月曜日に3社合計が買いの傾きとなり、その後は売りの傾きとなることが続いたが、先週木曜の夜に米国株がGDPの上方修正により上昇したことを受けて、週末の金曜日にその動きが出たのである。そのため、月曜日は金曜日にデルの決算で米国が下げたこともあって一転して売り超の動き(3社先物▲1500億円)となったのである。

そして昨日の先物の傾き。CSがTOPIXを売り、UBSが225で売りとなっているが、3社計の225、TOPIX合計は▲600億円程度と大きくない。225ラージのザラ場(イブニング含まず)の3社シェアも売り、買いともに44%台と50%を超えることも珍しくないここもとでは小さい方である。

仕掛けの裏にあるものは当然オプションである。事実だけを書く。昨日の前述ラージ市場で、弊社が裁定ビッグプレイヤーと考えている外資2社、国内3社以外で金額ベースで大きな売りの傾きを示したのは2社、JPモルガンとリーマンである。JPの売り超金額換算(ザラ場ラージ、弊社試算)▲2300億円超、リーマン▲4700億円超。

因みに昨日の両社の9月限プットオプション手口、12500円P、JP▲758枚の売り、リーマン▲751枚の売り、13000円P、JP▲100枚の売り、リーマン▲300枚の売りとなっている。そして、8/29(先週末)のプットの残高であるが、9月限プットオプション12500円、買い超1位がリーマンの6007枚(2位はドイツの2685枚)でJPは7位の買い超355枚となっている。9月限プットオプション13000円買い超は同じく1位がリーマンの2994枚でJPは5位の969枚である。これは、あくまでも、昨日のラージ市場の傾きが大きかった2社の数字を載せただけであり、何も仕掛けを誰かが行ったと示唆するものではないことにご注意頂きたい。

このように先物市場で急落する場面では、当然プットが行使される確率が高まり、オプションの先物換算の枚数が大きくなる(デルタの上昇)ため、そのヘッジを行わなくてはならず、先物の売りを行う者が現れ相場下落に拍車がかかる。そのため、先物の売りといっても、仕掛け時の売りと、プットオプション(を売っていた者の)ヘッジに関わる先物売りは根本的に違うことを認識すべきである。以前、プット売りの危険性(8月プットの売りを勧めて、手仕舞いを勧めたあとに載せた)について書いた部分はここに通底する。

先物・オプションの入門書で何か良い本はないかという問い合わせを数件頂いたが、私が友人に以前紹介した本を載せる。「日経225オプション取引 基本と実践」増田丞美著 日本実業社

2008年9月 2日 (火)

080902日本株ストラテジー

* 「上からだけ取る」というストラテジーに変更はないがここ2日、3日はポジションを持たない期間を作ることが必要かもしれない。

 ここのところ、先物主導で相場の方向性が決定されていることはここで繰り返して述べる必要もないが、日本市場における先物の立場は米国においてやはり金融株である。

 頂いているコメントを見ると皆さんやはりショートから入って回転を効かせることが奏功している印象を受ける。また、相場の下落を予想する向きも非常に多いが、米国のグスタフの影響度合いが判明してくるにつれて、「原油再下落→金利上昇懸念後退」がポジティブに働き、一時的に金融株が買い戻される展開となるリスクも考慮しなくてはならない。3連休明けの今日から数日の米国株動向は非常に重要である。また、3、6、9月という証券会社の決算発表月を迎えたが、今回も8月中旬以降、前2回と同じく“金融ドンパチ(金融機関による金融機関の悲観的なレポート発表)”が行われているが、カラ売りの加速を招いている印象はない。そのため、ここでは一旦回転売買を止めて、水準の変更(ボックスの上方シフト)が行われるのかどうかを見極めるためにポジションをとらずに数日静観視を決め込むことも必要かと思われる。(8:45)

2008年8月29日 (金)

080829GDP、日本株コメント

朝方配信した米国株概況で小林の見方が書いてあるが、早朝のすり合わせで私と小林で少し意見が異なったのが、7-9月期のGDPの見方と、それが発表されたときの市場反応予想である。昨日上方修正された4-6月期のGDPであるが、小林は速報値の+1.9%という数字をまずは“悪くない数字だ”と感じたのに市場の反応が冷ややかで相場が下落したことがややトラウマになっている。そのため、4-6月期のGDP+3.5%達成後の7-9月期GDP発表における市場反応を危惧しているのだ。

私は8月中旬に米国経済について数回触れた。8/15(金)の「NARサプライズ」において、メリルリンチのファンドマネージャー調査を紹介した部分を再掲する。

「米国の景気について私は1-3月期、4-6月期と金融を除いた企業収益に対して一貫して「それほど悪くない」という姿勢を採り続けてきた。そして、それが今回の調査でファンドマネージャーの意識のなかにうまれつつあることを感じるまずは、企業収益見通しで最も伸びが期待される地域で米国が2位となった。1位は無論新興国なのであるが、米国への期待が復活している。このことは通貨見通しでも見てとれる。ドルが過小評価されているとの回答が半数を超え、今後12ヶ月での通貨上昇・下落予想も63対10と差し引きで+53と大きなものとなっている。(先週述べた米国30年国債の入札結果はドルに対する信認行為である)因みに、この差し引き数字を6月から遡って列記すると、+36、+39、+31、+33。今回の8月調査で急増したことが分かる。原油下落とカラ売り規制による株価の安定はこのような意識変化をもたらすのである。現在、市場の米国景気の底割れ懸念は根強いものがある。連日のニュース報道もそうである。しかし、景気に株価が先行してきた歴史には、このようなファンドマネージャーの意識変化が世論に先行して生じてきたという背景があることも認識しておくべきだと思う。

企業収益予想といえばトムソン・ロイター社が有名であるが、同社の見込みはここのところ短期間で数字が大きく変化するので厄介なのであるが、それが金融セクターの見込みが大きく変化するからであると斟酌して数字を見ていくと、方向性としてはズレがなく予想してきたことが分かる。そしてその数字が第3四半期については5四半期ぶりに主要企業で増益に転じるとの見通しを示している。同社の見込みは7/1のクオーター入り日に既にプラス(前期比+13%弱)であった。金融機関の評価損拡大による最終利益の落ち込み見通しによって、どんどんその幅は小さくはなってきているが、先週末の時点でも+6%の見込みとなっている。ニュース等から感じてしまう米国の景気底割れ懸念を鵜呑みにするのは危険な時間帯に入ってきた。

また、翌週8/18(月)には

「一つ誤解しないで頂きたいのは、これから米国景気が急回復をするということを述べているのではないということである。先週末に発表されたニューヨーク連銀景況指数も事前予想に反しプラスのサプライズ、また鉱工業生産・設備稼働率も予想を上回る良い数字であったが、あくまでも現段階で述べたいのは、1-3月期、4-6月期の企業収益がそれほど悪くなかったということと、7月以降のマクロ指標に明るさが出てきたということ、また、実物である住宅に「価格」と「需要」という関係が戻りつつあるということであり、結論として世論の「底割れ懸念」を鵜呑みにしてはいけない時間帯に入ってきたということである。

全体を見回して、雇用と金融機関に対する不安、また、その金融機関が結果的にもたらす信用収縮(マネーフローの縮小)が消費に与える影響を考えれば急激な景気の回復は有り得ないこと。これはこの先の毎月発表される自動車販売がおそらく証明する。毎月のように触れてきたが、米国ビッグ3の動向やピックアップトラックの売り上げなど見るまでもなく、この代替エネルギー熱のなか、日本車の売れ行きにおいて安いホンダのフィット、シビックが順調で、高いトヨタのプリウスが厳しいという今の状況に変化が見られない限り米国の景気回復を体感することはない。」

住宅については今週8/27米国市場コメントの7月の新築住宅販売件数、6月のS&P/ケース・シラー住宅価格指数について述べているのでご参照頂きたいが、それ以前にやはり、8/15(金)の「NARサプライズ」において触れておいた。

「不安に傾いていた市場心理を好転させたのがNAR(全米不動産協会)レポート。その中身であるが、4-6月期の中古住宅販売は前期比▲0.8%となったが、増加した州が13と全米の四分の一近くにのぼったというもの。しかも、中古住宅販売価格の中央値が前期比で+5%と大きく上昇している。プラスに転じるのは5四半期ぶりのこと。ここで思い出して欲しいのが、先週の「080808米国市場コメント~グリンスパン発言から1週間~」での一節。[しかし、この動きに一旦歯止めをかけたのが、昨日の発表で皆がもっとも恐れていた6月の中古住宅販売(仮契約販売指数)。予想の▲1.0%が+5.3%はかなりのサプライズであった。これは昨夏の第一次サブプライムショック後にことの大きさを認識せずに市場が戻っていた昨年10月以来の数字。ゴールドマンはさっそく「中古市場が落ち着きを取り戻しつつある可能性を示している」とのレポート。。。]ケース・シラー住宅価格指数の前年同月比はまだ2桁のマイナスが続いているが、同指数の対毎月下落率は落ち着いている。少しずつであるが、実物である住宅に「価格」と「需要」の関係が戻りつつあることを感じる。」

私は特にこの7-9月期のGDPについても、また、それが発表された後の市場反応についても現在のところあまり危惧を抱いていない。今回は輸出がドル安効果によって牽引したとされるが、対ユーロとの関係ではそうかもしれないが、対円や他通貨との4-6月期の関係を考えると疑問符を打ちたい。きちんと数量ベースの堅調さも評価されてよい。

 日本株。現在何もシナリオに変化なし。ここ3日間の225先物ラージ日中の3社合計(NE、CS、UBS)シェア、ショート:57%、50%、54%、ロング:53%、52%、45%。これはあくまでもザラ場ラージの数字であり、ミニ先やイブニングミニ先でのNEのシェアはもっとすさまじい。

 事実だけを書く。8/22現在NE225期近ポジション、ラージ▲3402枚、ミニ(ラージ換算)▲7859枚。ミニがラージより多い。。。

裁定取引。やはり減少の一途を辿るとの見方には「?」。弊社推計で今週月曜日の買い残増加金額+1100億円超、注目した火曜日減少金額▲400億円以下。先週の月、火ほどの動きではない。8/18~8/26の累計で結局金額が増加しているが、その基準となる8/15の日経平均終値13019円であったのに対して8/26の終値が12778円と低位にあることを考えれば、8/15の頃に多くの人が述べていた「裁定買い残が減少することによって指数が下落する」というシナリオが当たっていたとは思えない。私が以前述べたのは「裁定買い残が増加傾向にあるときでも1週間くらいの減少を挟む。そして、その際に日経平均で400円程度下落する」ということである。それが8/7~8/15までの期間であったのだ。その時指摘した季節性を再度書くと5月~7月初旬は減少するが、8月~10月は減少圧力がなく、やや増加傾向を辿るということである。ただし誤解しないで欲しいのは、それ故に現在の重い信用ゾーンが突破されるとか指数が大きく上昇するという現物環境には無いということである。それは17連勝中に証明してしまった。

しかし、動意が薄い。裁定のビッグプレイヤー野村證券。その225先物ラージの商いが昨日、一昨日、ゼロである。。。

2008年8月28日 (木)

080828日経新聞1面「為替協調体制について」

またまたおもしろい意見が来ました。

「三鷹の××です。いつもご苦労様です。

ここもとは戻れば売りという井上さんのコメントに従って戻った場面で先物を売り12700円前後で買い戻すというスタンスで200円から300円の幅を何度も取ることが出来ています。 さて質問です。今日の日経一面記事についてはどうお考えでしょうか?

当然誰かが何らかの意図を持ってリークした記事には間違いないんでしょうが、何で今日の日経??といろいろ勘繰ってしまいます。わたしは、近々再び三極が協調して為替に介入しないといけない場面が到来することを示唆してる、たとえば米国住宅公社に対して日債銀や長銀方式での国有化が実施されるとか、GMの破綻といったような事象が発生することを示唆してるのではないか?と「素直」に裏読みするのですが、井上さんはどうお考えでしょうか?ブログの端くれでも結構ですのでよかったらご意見聞かせていただければ幸甚です。」

 意図的なリークとは全然思いもつかなかったので“素直な裏読み”(これから使わせて頂きます)という言葉に笑ってしまった。まず、協調体制についてであるが、ずっとお読み下さっている方は何度も触れたのでご存知だと思うが、3月中旬以降の相場で転機となった事由のうち大きかったのが、異例の「ドル防衛宣言」という観測気球を打ち上げてから6/25のFOMCで利上げができずに米国市場が大引けの1時間で株式が売られて、債券が買われたときまでの期間であったと考えている。

 6/6に私はこう書いた。

「これを受けて為替市場でドル/円は一時2月末の水準である106.44円まで円が売られる場面もあった。注目すべきはトリシェ欧州中央銀行(ECB)総裁の発言。並べると「物価安定へのリスクが一段と強まり、ECBは警戒を更に高めている」「タイミング良く断固たる行動をとる準備がある」「来月に利上げする可能性を排除しない。この日の利上げを望むメンバーが複数いた」。これまで読んで下さった方には耳タコであろうが、私はほとんどの債券ストラテジストがECBの利下げを予想するなか、「次の一手」が利上げであることを述べてきた。先月のECB理事会の翌日も“どこにもハトは居なかった”と述べたが、その日が確実に近づいていることを感じる。(もっとも、二日前のバーナンキ議長の講演が“スペイン”で行われ、ドル高維持を強く言ってくれたこともありトリシェも金利の引き上げに言及しやすかったのではとも考えているが。。。)」

その後、米国要人の度重なるドル高(ドル防衛宣言)が行われたが、6/10に続いてこう書いた。

「ポールソン米財務長官がCNBCとのインタビューで「他国の政府と為替について協議するのは有益「為替介入の選択肢を決して排除しない。いかなる政策の選択肢をもである」「トリシェ総裁のドルに対する発言は留意している」「バーナンキFRB議長とは常に連絡をとっている」と述べているが、これは非常にインプリケーションを含んだ発言と受け取れる。先週の“バーナンキFRB議長による、異例の「ドル防衛宣言」(in Spain)”を支持し、他国と連携をとって介入を実施してでもドル高政策をとるというものである。

この時点で連携の強さについては充分に認識していたことがお分かり頂けると思うが、ここで述べたいのはタイミングと誤算である。まず、タイミングであるが、6/6(金)失業率と原油高でダウは今年最大の下げ幅、▲394.64ドルを記録している。また、翌週から証券会社の決算が始まることもあって株式市場が下落するリスクにピリピリしている時であった。このタイミングで欧州だけが利上げをすれば金利差からドル安を招き、原油価格がさらに上昇する危険性があり、ドル高支持、そして協調利上げによって金利差を拡大させない狙いであったことは確かである。しかし、ここで米国の経済指標(特に製造業に関する指標)で次々と景気悪化を示唆するものが現れて、結局6/25のFOMCで利上げは見送られたのである。この日のことは鮮明に覚えている。翌日書いた文章。

「昨日のハイライトはFOMCの声明文。~中略~結果はやはり「引き上げ無し」であったが、“ドル防衛”の観測気球を上げた後の“欧米同時期利上げシナリオ”が先週来の経済指標によって変更を余儀なくさせられ、また、インフレ懸念を抱きながらも強くインフレファイト(利上げ)を滲ませると株価がクラッシュしてしまう懸念があることから、FED自身がかなり市場を刺激しないように配慮したものであったという印象を受ける。~中略~しかし、昨日の声明、及びその後の1時間足らずの相場が二つの大きなインプリケーションを与えた。重要なことを述べる。一つは「債券」に“安全な時間”が与えられたということ(この“安全な時間”とは買って安心な時間という意味であるが、勝手に私が作った言葉なので、あまりよそでは使わないほうがいいです)である。先週末と昨日、金利先物がどのレベルまで利上げを織り込んでいるかを述べたが、現在、50%程度まで再上昇していた次回(8月)の利上げ織り込み数値はこれから徐々に下落していくものと考える。また、二つ目は先週来、債券に買いが入る局面が度々あることを述べたが、昨夜、株式と債券の逆相関が高まっていることをはっきりと認識したことである。債券には声明後株式市場と反対に買い戻しの嵐が吹き荒れた。現在、4月以降その傾向はあったが、円キャリートレード(円での借り入れ、他通貨での運用)の流れが加速しており、それがドル/円のドルの下支えにもなっている。これによって、「商品」「株式」間のキャッチボールに完全に「債券」が加わる、しかも一つ目の理由によってかなり中心的な受け手となる可能性さえあるということである。」

三鷹さんが「素直な裏読み」で“何か不安なことがあるのではないか”と思われるのは、このように、前回、協調体制の観測気球が打ち上げられたのが不安定な時期であったからだと思う。

私は、今回の記事は特に裏読みはしなくてはいいのではないかと思っている。実際に30年入札でドルの信認が再度高まっていることは証明できているからである。しかし、この記事によって“グスタフ”に乗じて「ドル売り、原油買い」のポジションを作ろうとした者は少しビビッたであろう。それ(原油価格再上昇)に対する牽制かもしれない。しかし、7月であったか日経新聞が欧米の金融姿勢に不協和音が出ているのではないかという記事が出た際に、私はここでかなり強く噛み付いた文章を書いた覚えがある。同じ日経新聞なだけに不思議な感じがする。

2008年8月27日 (水)

080827米国市場コメント

 経済指標のラッシュであった。

7月の新築住宅販売件数:51万5000戸と数字が発表されて、事前の予想よりほんの少し悪いかなという印象であったが、なぜか前月比プラスであったので、よく見ると前月数字が53万戸→50万3000戸に下方修正されていた。(今朝のモーニングサテライトで一瞬であったのでよく聞き取れなかったのですが、1桁大きく言ってませんでした?言ってなければいいのですが。。。)結局5月~7月は50万戸を割らずに底バイというか、一応の底入れをしていると見る。月末在庫41万6000戸。私は好印象を持つ。半年で15%程度在庫が減少したという事実を認識すべき。7月の減少率は45年ぶりの大きな数字とのこと。実需に価格がつき流動性が出てきていることの好影響。

6月のS&P/ケース・シラー住宅価格指数:全米主要10都市、主要20都市ともに前年同月比下落率が過去最高、それぞれ▲17.0%、▲15.9%。しかし、両数字ともに前月より▲0.1%下落しただけ。前月比では下落率が縮小。来月あたり(7月数字)底バイからほんの少し明るい数字が出る可能性があると考えているのは恐らく今は私だけ。4-6月期の住宅価格指数をOFHEO(米連邦住宅公社監督局)が発表しているが、過去最悪であった1-3月期から少し浮上している。(しかし、この数字、いつも思うが米国にしては発表が遅すぎる。)

 8月の消費者信頼感指数:事前予想の53.0に対して実数字56.9、好印象。先月も書いた期待値が先月の42.7→52.8は非常に明るいが、再三指摘しているように同数字のもうひとつの目玉である雇用はさらに悪化。所謂雇用ID(「職が見つけやすい」-「職が見つけにくい」)は▲16.6→▲18.9へと厳しい数字となった。

 8月のドイツIfo:景況感指数は7月より更に悪化。97.5→94.8また6ヶ月見込み指数も89.9→87.0へと悪化。Ifoについては度々紹介したが、とても注目すべき指標。というよりも欧州でひとつだけと言えばこの指標。欧州短観と考えてよい。ECBの利下げに向けた時間軸は確実に短くなっている

 これと好対照であったのが昨日午後に発表された8/5FOMC議事録。抜粋。「一部メンバーは来年もインフレ率が下がらないことを懸念している。」「参加者は概ね次のアクションは利上げとみている」(ECBとの齟齬、半年ぶりのドル高/ユーロ安水準へ為替が反応した)「金融機関にとって資本増強は一段と困難になってきた」「住宅ローン金利上昇は住宅危機を一段と悪化させる」「数名は金融市場リスクが後退したと判断している」このインフレに関する部分は市場にとってネガティブであるが、思えば8/22にバーナンキ議長は「原油相場の急落を受け物価が落ち着く」と発言(ダウは約200ドル上昇)しており、8/5~8/22の時間的なズレと考えれば説明はつく。先週も書いたが、物価について大きく流れが変わった際に、過去の数字に惑わされないことが大切。その前の物価指標で売られたものの、前述のように8/22のバーナンキ発言で市場が大きく上昇したのはその好例。買戻しがすごかった。昨日も議事録が発表されて暫くすると株式市場は上昇し始め結局プラス圏で引けた。

 しかし、現在の米国市場が金融株の動きが中心でボラタイルな動きとなっていることを指摘しているが、実際に日本株と同じく現物株の動意が非常に小さい。NYSEの出来高をみてみる。①戻り高値(5/19)から底をつけたカラ売り規制前日(7/15)までの39日間の平均出来高は14.0億株。②規制発表からカラ売り規制解除(8/12)までの20日間の平均出来高は14.1億株。③8/13以降昨日までの10日間の平均出来高9.9億株、ここ3日間は9億株以下。③の期間で出来高が三分の二にまで落ち込んでしまったことが分かる。②の期間をデイリーで見てみると規制が入っておよそ1週間で大きく買い戻されて出来高が高位で推移し、その後は夏休み期間入りしたことが分かる。しかし、ここまで出来高が減少し、それが長期化している状況は過去に比べても少し異様、夏休みだけで説明することに違和感を持つ。来週月曜日レーバーデー明けに参加者が戻るとされているが、出来高の推移を見守る必要がある。

補足:「080826日本株コメント」

昨日掲載した「080826日本株コメント」に添付された表の見方がよく判らないとのご指摘がございました。遅くなりましたが、表の見方の説明を以下の通り掲載させていただきますので、ご参照ください。大変申し訳ございませんでした。

列の左側から順に、

225・・・日経225採用銘柄を表しています。

PER・・・PER実数値

PBR・・・PBR実数値

利回り・・・配当利回り実数値

以下、偏差値データについてのご説明。

各偏差値データは学力テストの偏差値と同様の考え方をしております。

つまり50が市場平均を表しており、数字が大きいほどその度合いも大きいことを意味しております。

変動性偏差値・・・数字が大きいほどボラティリティーが高い。

順バリ度偏差値・・・数字が大きいほど直近のパフォーマンスが良い。

割安度偏差値・・・数字が大きいほど割安感が強い。

需給偏差値・・・数字が大きいほど売買代金25日平均に対するNET信用売り超金額の割合が大きい。

25日乖離率・・・株価25日平均に対する乖離率

1Mリターン・・・直近1ヶ月リターン実数値、

3Mリターン・・・直近3ヶ月リターン実数値

以上でございます。

尚、銘柄の順番は25日乖離率のプラス幅が大きい順に並んでおります。

銘柄選定の際の、スクリーニング・ツールとしてお使いいただければと存じます。

2008年8月26日 (火)

080826日本株コメント

 先週月曜日、火曜日のコピーのような相場である。何も状況が変わっていないなか閉塞感だけが漂っている。米国のボラティリティーは相変わらず高い。しかし、よく考えて見れば7月のNYダウの終値は11378ドル、昨夜の引けが11386ドル。結局方向性を出せずに数日単位で上に往ったり下に往ったりしただけなのである。「シカゴCMEがダウに比べて少し弱含む場面があり気掛かり」と書いたが、同期間のCME日経平均の動きは13335円→12685円で▲650円と日経平均がダウに比べて弱含んだことがはっきりと分かる。

 これが、米国にはカラ売りの買い戻しがあったものの、日本株のカラ売りポジションがかつてのように大きくない状態が続いており買い戻し圧力が無かったことの差であり、完全に3月中旬からの戻り相場の逆の状態である。このことについては、7月中旬にSECの19銘柄カラ売り規制を発表してからの2日間の相場の動き(欧米株急上昇、日本株横バイ)で説明した。それでも、日本株が翌週急上昇したときに先物の買い戻し圧力のことを指摘したことを覚えていらっしゃる方も多いかと思う。「おっと、先物に」というタイトルのときである。そして、それが、ずっと、継続しているのである。現物に対する外国人の買いたい、売りたいという動意は全然感じられない。

 “先物ぶんまわし相場”。先週の売買においても目立った時はNEとCSの動きを中心に伝えたが、金額ベースで1000億円超の傾きを2日みせたNEの225先物の週間トータルの金額の傾きは実は弊社試算で20億円程度(限月を移行させるスプレッド取引を含まない)。「えーっつ?!」と思われる方も多いかと思う。CSにしても200億円を大きく下回る金額となっている。これに、なんか枚数が売り、買いともに大きくて傾きがよく分からないが、終わってみればそれなりの傾きとなっているUBSが加わって指数が動き、裁定がそれを追いかける相場が続き、結果的に日経平均は▲350円以上下げたのである。昨日も裁定はきちんと買い残を作っている。これも先週の月曜日と同じであるが、先週の火曜日はその20%以上増の解消売りが出た。同じことを繰り返せば確かに裁定の解消傾向がまだ続いていることとなるが、以前も書いたが判断するには早計な時期である。弊社が計測している裁定に関わる現物株の平均単価が高止まりしている。指数寄与の高い銘柄中心の裁定が続いており、それが指数のボラティリティーを高めている。また、昨日のような場合は皆裁定買いに傾くが、弊社が計測している主要裁定業者グループの動きで跛行色が見られるときが先週も見られた。方向性は確定していない。

 現在分かっていること。

[日本株]・13500円より上に信用が重いゾーンがあるということ、・先物、裁定主導であるが、両者とも確固たる方向性を持っているとは思えないこと(下げた分上げることも、上げた分下げることもいつだって可能な状態。何も意志はない)、・現物に対する外国人のイントが売り、買いともに無いこと、・急落しない限り個人の現金は出動しないこと、・信託(年金)は大きなリバランスが終わっており、アロケーション(国内債、外国債、株式)とおりの動きしかしないこと。

[米国市場]・商品市況の再上昇の可能性が小さいこと(すごろくは戻らない)、・金融株次第であり、大きな浮上は“カラ売り需給”に刀を抜くしか手はないこと。

コメントを紹介します。昨日頂いたものです。

「以前日経株チャンラジオ放送にて、現物市場でエルピーダを買うのであれば、村田を売ったらというようなことを話されておられましたので、それをヒントに最近225主要銘柄の組み合わせを考え、終値と各銘柄の開きをグラフ化し、開き(指数)が大きくなった時、売買をするように(裁定)しております。

例えば、7/23のサッポロ買い・アサヒ売り、8/7 住友鉱買い・三菱マテリアル売りという具合に金額を合わせて行っております。割高を売り、割安を買うようにしております。大きく利益がでるわけではありませんが、損をする確率が以前より少ないように思えます。組み合わせが一番重要ですが、過去のグラフも作成し開き具合も検討しながら行っております。折角グラフを作成しても裁定に不向きな場合もありますし難儀しておりますが、これは使えるという銘柄に出会った時は疲れもとれます。最大6か月以内に反対に開きが大きくなる銘柄を探し出すようにしております。日米とも株価の落ち着きがなく夜も気になって眠れない日がありましたので・・・自分では、安眠レシオ(ANMIN RESIO)となずけております。又裂きにあわないような組み合わせを作りたいと思っております。このようなやり方での問題点等がありましたらご教示いただければ幸いです。

本日のラジオにて井上様が話されていた裁定買い残の話、良く理解できるようになりました。

8/22のブログ「すごろく」の中に、「先物やOPは投機色が強くて、ちょっと気が引ける」・・・とありましたが、先物によって現物株が左右される現実があるわけですから私は避けては通れないと考えるようになりました。ただ現実的には、例えばプット・コールという言葉は理解出来てもそれをどのように運用すれば良いのかわかりません。井上様のブログとラジオを聞いてわかるようになりたいと思っております。

「私は、先物もOPも使わず現物株だけで勝負するということにとても恐怖を感じる・・・」という言葉にとても衝撃を感じました。

今後ともよろしくお願いいたします。」

まさしくずっとこのブログを通して伝えたかったことです。「安眠レシオ」いいネーミングですね。弊社の電子部品の表(本日前場引け情況)を載せます。(「需給」は信用残が左右します。偏差値が大きい銘柄には売り超に傾いている銘柄が多いことにご留意ください。)本当はこの全業種の表を開示したいのですが、コンプライアンス(著作権)の関係で出せません。ごめんなさい。絶対に役立つ表なのに残念です。(さらに詳しいのもあります。)

 あと、先週の「すごろく」で税制のことを指摘することを忘れましたが、そのコメントも頂きました。全くもってそのとおりです。現物との通算が待たれますが、もうじきだと思います。この問題点については臼田さんも強く言われていました。

080826

2008年8月22日 (金)

080822「すごろく」と先物利用の勧め

 まずは、裁定取引について。18日(日経平均が先物主導で上昇し、指数が+146円であった今週月曜日)の先物コメントを入れた際に「裁定買いが入った模様」と述べたが、(毎日裁定を追っている人は既にお分かりのことで恐縮だが)やはり4500万株あまり裁定買い残が増加した。これは17連勝後の減少傾向のなかとても大きな数字に映るが、翌日19日(先物主導で指数▲300円の下落)には一転して4200万株の解消売りが出されている。この両日が如何に先物の荒い動きに振り回され、結果的に裁定の機会を与えたかが分かるが、この裁定の動きは、基本的にモルガン、ドイツ、野村、三菱UFJの4社の先物動向と一致する。この両日を見ても225先物の傾きが同じである。ここに、両日ともCSが裁定を売りに傾けたり、みずほが動いたりとか、また、これらの現物の相手方が225の立会い外で行われたり、TOPIXや一部OPで行われたりということもあるが、それらまでは追っていられないのが個人投資家の実情であると思う。これらは全てノイズ(システム運用などでファクターの動きで説明できない部分の総称を指して言うものであって、雑音という意味ではない)だと考え、この4社の225ラージのザラ場の数字を見ていれば基本的にその履歴は追える。

 さて、「すごろく」であるが、昨日書いたように個人投資家や機関投資家のリスクをとる部分のお金は、結局「すごろく」なのだと思う。振り出しは日本株であったかもしれない。ITバブルや2005年の小型株相場を経て流出した資金は、その後、「中国」「インド」「ベトナム」「トルコ」とどんどん駒を進めていき、「南アフリカ」にまで行ってしまった。すごろくは道が分かれている。途中で「REIT」や「商品」に駒を進めた向きもあったであろう。そのすごろくでとても太い道筋を作った商品がある。「FX証拠金取引」である。

 1ヶ月ほど前のことであるが、マネーパートナーズ社社長の奥山泰全氏とNPO法人日本デイトレーダー協会理事長の砂田洋平氏と久しぶりに一献傾ける機会があった。機知に富んだ両氏の話はとてもおもしろかったが、奥山氏の話からFX証拠金取引の浸透具合のスピードに大きく衝撃を受けた。奥山氏はご存知の方もいらっしゃると思うが、かつてトレーダーズ証券を株先の業者として育て上げた人と言っても過言ではない。それでは、もう一度、株先をやる気はありますか、との私の問いに同氏の答えはあまり前向きなものではなかった。逆に「なぜ、ここまでFX取引が浸透し、拡大していると思いますか?」との問いに私が答えたのはふたつ。「日本の金利が低いから。為替は指数で、且つ、金利がつく指数だから」というものであった。砂田氏が別れ際に言った「日本(株)には、もうリアルマネーが来ないのでしょうかね?」という言葉が印象的であった。

 投資のスタイルは自由である。長期投資で現物だけを手掛ける手法を否定はしない。しかし、金利が低く、結果株式に対する期待収益率も低い日本株運用において、先物とオプションを使わない安定的な運用を私は考えられない。指数(先物)の利用については勧めてからもう7~8年の月日が過ぎる。先物における個人のシェアが拡大しつつあり、また、ミニTOPIXの創設によってTOPIX先物でも少し動意が見られるなど確実に先物が個人の投資スタイルのなかに根付きつつあることを感じるが、いつか個人投資家のシェアが韓国の指数先物のように大きくなって欲しいと願っている。この「先物の利用(活用)」については、やはり3週間ほど前に、カブドットコム証券の臼田琢美常務と同社の多くの著書で知られる藤本誠之氏とミーティングを持った際に両氏も同じ意見であった。

 「先物やOPは投機色が強くて、ちょっと気が引ける」という人は多いが、私は先物もOPも使わずに現物株だけで勝負するということに、とても恐怖を感じる。現物を保有しているのに先物をヘッジで用いない方がよほど投機色の強い運用である。無論、前に記した商品は全て投機である。子供が海外に留学しているのでその送金ヘッジのためというような理由が無い限り、FXも投機である。「投機」というと皆、大きな投機資金のことを思い浮かべてしまうが、小さな資金でも実需が伴わない限り“投機は投機”である。「運用は全て投機だ」で片付けてしまえば楽であるが、日本株の個人が保有している残高、信用買い残を考えると、先物の利用状況の小ささは異常である。このことが結局、株式運用を投機色の強いものにしてしまったのではないか、塩漬けの株を作ってしまったのではないかという疑問が湧く。

080822 日本株ストラテジー(OP手仕舞い)

 何も相場感に変化はない。米国の商品市況は再度(小さなではあると思うが)戻りを試す流れに入っており、また米国の金融株を巡る状況については昨日述べたとおりである。そのため、あくまでも利喰いということだけであるが、週末を控え、土、日のタイムデイケイも考慮して先日ここに載せた9月限12500円プットの買いは私であればここで一旦利喰う。(9:23)

2008年8月21日 (木)

080821二つのクライマックス

 二つのクライマックスが近い。ひとつは米国GSE2社への公的資金投入、そしてもう一つは中国の金融緩和である。早合点しないで欲しい。だから株が上昇するということを述べたいわけではない。

 GSE2社への公的資本投入は避けられない。“その日”が近づいていることは確かである。根拠は証券会社や金融機関のレポートではなく、雑誌、新聞、他のメディアがこぞってこのことを連日報道しているということ。先週末のバロンズ誌を皮切りに今週に入りNYタイムズ紙、WSJ紙がこぞって「いつか?幾らか?」を論じている。米国の施策は金融機関のレポートではなくその他のメジャーな報道(世論の高まり)を受けて行われるきらいがある。これらの報道を受けて現在の米国市場が“催促相場”となっていることは確かである。

 ファニーメイの“その名のとおり”マッドCEOがこの公的資金の投入を拒否(否定)しているが、その姿はバブル崩壊後、保身と責任追及を恐れていた邦銀幹部の姿にダブる。「資金導入を市場は織り込んでいる」と言っても、それは債券の世界の話である。リーマンのレポートが出た直後からGSE2社の債券がデフォルトをおこすことはないと私は主張してきたが、そのスプレッドは現在完全に落ち着いている(無論、弁済が劣後する債券等は含まない)。つまり、デット(借り入れの部分)については公的資金の投入を織り込んでいる。

 問題はエクイティー(資本、株式)の部分である。既存の株主価値がどうなるのか(といっても今朝書いているように時価総額は今年に入り既に90%毀損しているが。。。)ということである。もっと、有体に言えば、「上場が維持されるのか、されないのか」の1点である。

 日本のバブル崩壊後を思い出してみよう。金融不安が最終的に加速したのは、“半分政策銀行”と思われていた、日債銀、長銀が破綻し、異例中の異例である「上場即時廃止、整理ポスト行きもなし」という措置が取られたときであった。1ヶ月後に提示された、信用取引の決済株価は無論、ゼロ円。この超法規措置によって金融不安はクライマックスを迎えたのである。カラ売りをしていたヘッジファンドは大喜びで、「次はどこか?」と信用不安のある銀行をカラ売りしまくったのである。これが劇的に潮流が変わったのが、2003年5月のりそな銀行に対して公的資金が投入された(自己資本を国内業務に必要な基準である4%に回復させるため)ものの、債務超過ではないという理由で上場が維持されたときであった。ゴールデンウイークに「公的資金投入」が決定されたこともあり、休み明けに出社すると外国人のヘッジファンドからたくさんの「やった!」というメールが届いており、苦虫を潰しながら読んだことは忘れられない。あの時に当時の担当大臣であった竹中平蔵氏が日銀総裁と喧嘩してでも上場を守ったことが、その後のヘッジファンドの買戻しを招き、日本市場は大底をうった形となったのである。

 現在のGSE2社の立場がちょうど当時の日債銀、長銀に該当する。もし、上場廃止となれば、「半分政府系の金融機関でさえ上場廃止となったのであるから、他の民間銀行の破綻は加速する」という見方に流れは傾いてしまう可能性が高い。

 このようにGSE2社に対する施策において鍵となるのは、金額ではなく、上場が維持されるのかどうかであるということだということを意識してこれからの推移を見守る必要がある。そして、時期であるが、昨日は「GSE幹部と当局がミーティングを近日中に持つ見込み」というニュースが流れたが、一方で夏休みが明けてレーバーデー(9/1)を過ぎた頃ではないかという見方も浮上している。遅い。それまでに“催促相場”が小さなクラッシュをもたらす可能性も排除できないというよりも起きる可能性が高いと考える。そして、立ち返るが鍵は「上場維持か否か」である。“催促相場が催促しているものは何か?”それは決してGSE2社に対する公的資金の投入ではない。需給に対してSECが再度、刀を抜くことなのである。つまりは「カラ売り」に対する規制である。それまで催促は続く。竹中氏が毅然として「債務超過に陥ってなければ上場は維持する」と言い放ったことは「カラ売り」という需給に対して刀を抜く姿勢を日本が見せたことであったのだ。

 日債銀、長銀というと私は草笛光子が出ていたテレビのCM「にっさいぎんの、ワリシン。お求めは山一證券で!」を思い出してしまう。(古い。ものすごく古い。恐縮。)この2社とも既に無いが、当時個人の金融債に対する投資熱は非常に高かった。1年物のワリ債(割引債券)は無記名(今にしてみると脱税促進のようで恐ろしい)であったこともあり、証券会社にとっては安定的に売れる商品であった。また、5年利付き金融債(以下利金)も人気が高かった。この5年利金、80年代に入りバブルが崩壊して金利が低下するまでの期間をならしてみると、平均的なクーポンがほぼ5%前後であった。

 つまり、現在は考えられないが、「5年、5%」という金利が一般的であり、これが日本の個人資産を形成する礎の金利であったのだと考えられる。この「5年、5%」という金利水準がそのままあてはまるのが、現在の中国である。中国政府がインフレ率をこれ以下に抑え込みたいのはこの実質金利にも配慮したものであるといえる。しかし、その中国政府のスタンスが明らかにここのところ、インフレよりも「景気減速回避」に軸足を置きつつある。なんらかの金利政策は必ずや取られるであろう。近々に、である。昨日、上海株はその期待から大きく買われた。施策実行後は上昇する局面もあろうかと思う。しかし、例え指数が20%上昇したとしても、その後はまた下落基調に回帰すると思われる。

 今年の3月中旬以降の戻り相場のなか、寄せられたコメント(質問)で、実は一番多かったのが「中国株も戻っており、買いたいと思うがどうですか?」という内容であったが、私が送った答えは全て「アジア株に対する見方については春先に述べた下落基調継続を変更する気はありません。」であった。そして、現在も不変である。ヘッジファンドの資金の流れは「商品」「債券」「株式」間のキャッチボールであることを述べてきた。それでは、個人資金や機関投資家のアセット(資産)うちリスクを取る一部の資金についてはどうか?私は、「戻ることもできる“すごろく”」だと考えている。そして、そのすごろくで戻った者はいない。これについては明日述べる。

 日経新聞系の報道会社に日経QUICKがある。ここが配信するデリバティブズ・コメントという有料サービスに寄稿し始めて、早いものでもう10年の月日が経つ。先週の寄稿のタイトルは「中国、金クラッシュ!」である。五輪の話ではない。「ク」がついている。大証で中国株ETFが、そしてここでも紹介したように東証で外資ファンドの金ETFが上場して、両商品ともほどなく天井をつけている。祭りのあとの掃除ばかり日本の投資家はさせられているような気がする。

2008年8月20日 (水)

080820信用残コメント

 現物不在の相場が続いているが、今朝の日経新聞で信用取引残が低水準で推移していることが載っていた。昨日私は主体別動向を載せ、個人投資家の動向について信用、現金それぞれについて述べたが、「買い余力が小さい」とした信用動向について日経平均が週末値で戻り高値をとった6/6と先週末の比較を行ってみる。

( 弊社は東証が発表している3市場残を東証1部銘柄、日経平均採用225銘柄の別で計測し、また、個別銘柄について[(信用買い残-信用売り残)*週末株価]で算出される「NET信用金額」を算出していることは長くお読み頂いている方はご存知のことと思う。)

 信用の買いが日経平均(以下225)採用銘柄で行われてきた推移については、この信用動向で折に触れて述べてきたが、この買いが行われたゾーンについても指摘してきた。冒頭で述べた6/6の225は14489円、そして先週末が13019円、およそ1500円の指数の下落であるが、東証発表の信用買い残は1兆9560億円→2兆320億円と760億円程度増加している一方で、弊社が計測している東証1部銘柄買い残(以下東証1部)は1兆7010億円→1兆5640億円と1400億円弱減少している。225についても1兆260億円→1兆60億円と200億円程度の減少である。しかし、東証1部の減少金額が225に比べて大きいため、「225/東証1部」の比率は60.3%→64.3%と大きく上昇している。また、その推移であるが、東証1部の買い残のピークは6/27(指数13544円)であるのに対して、225はその前週6/20(指数13942円)となっている。つまり、14489円から14000円に下落する過程で225は信用買い残を既に増加させてしまったのである。(このことについては当ブログ及びラジオでは数度触れた)6/6~6/20の、指数が14000円オーバーの期間の東証1部の買い金額の増加額はおよそ2000億円であるが、そのうち225は1500億円以上を占める。

 このゾーンのしこりが裁定買い残増加による指数の上昇によってほぐれることが今回の希望であったのだが、ここで述べてきたように13500円~14000円のゾーンのしこりをほんの一部ほぐしてくれたものの、結果的に期待外れに終わってしまい、述べたように裁定買い残17連勝で日経平均は200円程度しか上昇せず、且つ信用評価損率が悪化するということになってしまったのである。この理由には2つのことが考えられる。・春先の上昇は銀行株の上昇に象徴されるように、それまでの外国人のカラ売りの買い戻しが裁定取引とともに牽引したが、今回はカラ売りが溜まっていなかった。・この17連勝中に電機・自動車の主力企業の4-6月期決算が発表され、指数寄与度が高く、信用買い残も大きいこれらの銘柄の株価が不冴えな推移となった、である。

 日経新聞は「相場の下支え役となりやすい個人が積極的な売買を手控えていることが値動きの荒さの一因」としている。私は個人の「現金」が急落時に相場の下支えをする場面には何度も出くわした(ライブドア・ショックしかり、上海ショックしかり、サブプラ・ショックしかり)が、信用買いは相場の下支えというよりは、その残が上値を抑える役目を果たしてきたように思う。現段階で、この信用買いが活発に行われる可能性は極めて低い。その前に整理が必要なときである。実際に指数が200円上昇した8/8の週に225の買い金額は460億円も減少している。指数上昇時にはまだまだ整理売りが続く。

 さて、その整理売りがどこまですすめば信用買い残が重石とならなくなるかであるが、それは6/6、8/15比較における信用買いの比較から推測する。この225の金額については、1兆260億円→1兆60億円と200億円程度減少していることは前段で述べたが、実は、買い株数は10億6000万株→11億7760億株と増加しているのである。つまり、金額ベースの減少は株価の下落によるもので実際の買い株数は増加しているのである。この増加株数1億1860万株に現在の225買い残平均単価(弊社試算)である854円を掛けると丁度1000億円という金額になる。これが225信用買い金額における、“重石とならなくなるために必要な減少金額”であろうと推測する。

 ここに表を載せる。これは6/6と8/15のNET信用金額上位50社ランキングである。この合計の増加額は940億円と上記の金額に近い。これが“重石”である。(因みにNET信用金額が10億円は6/6時点で73位、8/15時点で72位と位置は変わっていない。上位50位の総額が増加したのである。またこの表が225銘柄だけであり、任天堂等は含まれていない。)この間の個別銘柄の動きとしては、金融のNET信用金額増加が目立つ。また、商社、電機、海運、自動車なども相変わらず金額が大きい。そして素材。指数寄与が高いこれらの銘柄が結果的に相場を重くしている。また、本来救われる裁定買い残増加の恩恵を今回受けられなかった銘柄も目立つ。

 因みに、225の信用買い金額は前述のように8/15現在で1兆60億円と丁度1兆円であるが、昨日のNE、CSの2社の先物売買合計における225先物の傾きは▲1500億円(弊社試算)の売り超となっている。信用買い残の7分の1以上の傾きが1日で出てしまっているのである。大きさがお分かり頂けると思う。因みにTOPIX先物を合わせると2社で丁度▲2000億円(弊社試算)の売り越し。日経新聞要約の後半部分「個人が積極的な売買を手控えていることが値動きの荒さの一因」は鶏とタマゴ。値動きの荒さが積極的な売買を手控えさせている一面も大きい。080820_0815_0606net50

2008年8月19日 (火)

080819「上からだけ取る」日本株ストラテジー

(数字、金額は全て弊社試算。正確さを保証するものではありません。)

方向感がないというのは本当にこのような相場を指すのだと痛感する。昨日も先物だけの相場。寄り後の買戻し圧力にただただ唖然とするばかりであった。NE、CS2社で225、TOPIX合計金額換算約1700億円の買い。1000億円を超える傾きはさすがに大きく指数を動かすが、それが8/6から昨日までの営業日数9日間で5日も出ている。それでは2社の傾きのどちらの影響度が高いかといえば無論NE。そして以前にも述べたが、2社の傾きが同じ方向となったとき、指数のベクトルは大きく伸びる。

昨日のNEの225の傾きは買い越しで1000億円(!)を越える。これは同期間で最も大きかったが、CSの傾きも400億円。ザラ場(立会い外を含めない)ラージの主要業者の商い(NE、CS、モルガン、パリバ、GS、メリル、ドイツ、UBS、リーマン、野村、大和、三菱等)を測っているが、これらカッコ内12社の昨日の買い枚数合計は70000枚弱。うちNEが39%、CSが7%、2社合計のシェアは46%にも上る。分母から傾きを見せなかったUBSの商いを除くと2社のシェアは58%にまで上昇する。

 ここまでの大きな買いの傾きがあると、モルガン、野村、ドイツの裁定ビッグプレーヤーの先物はさすがに売りに傾いている。ザラ場ラージで野村▲260億円、ドイツ▲400億円、モルガン▲26億円。「先物主導で指数上昇→現物の裁定買い増加」の流れが出たものと推察される。

 それが一転して今日の相場。これも先物主導の動きであるが、なぜこれほどまでに先物主導の動きとなるかといえば、やはり現物の動意、投資意欲が乏しいからという理由に帰結してしまう。8月のメリルリンチ社・ファンドマネージャー調査における日本株に対する買い意欲の減退は先週述べたが、「3月中旬以降跛行色が薄れた」と以前ここで紹介した、外国人の現物と先物の傾きの跛行色が7月に入り再度高まっている。「現物売り、先物買い」傾向である。7/7~8/8の期間合計は現物▲6815億円の売り越しに対して先物はおよそ1兆円の買い越しを計測している。特にこの傾向が一気に拡大したのが先々週(8/4~8/8)のこと。現物が▲1000億円の売り越しに対して先物が+5610億円もの買い越しとなっている。先物主導の展開となり、私が先物と裁定のことばかり言い始めた時期である。

 他の主体別動向。信託(年金)、買いの柱となる可能性無し。以前、6月の最終週に現物を買い越した際の報道に対して大きく相場を買い上げる主体とはならないことを述べたが、完全に国内債、外債とのリバランスのみの動きにこの先も終始する展開が続くと思われる。3月末以降、それまで落ち込んでいた株式ポーションの引き上げ→5月以降債券の(それまでの急落による)アロケーションの落ち込みを埋めるべく債券買い、株式売りのリバランスを経て、現在は6月末以降債券に与えられた“安全な時間”によって債券価格が緩やかに上昇しており、そのため、債券の時価総額が上昇した分、株式のポーションも増やしている場面も見られるが大きな買い手とはならない。買い手となるのは、指数が下落した場合である。

 そして、個人。昨日のラジオでも述べたが、裁定買い残が17連勝(7/14~8/6)したものの、指数の上昇が13000円→13250円と小幅であったことと、主力株中心に作った信用買いが4-6月期決算を受けて下落する銘柄が多かったことによって、この期間で信用の評価損率は14%台から16%台に悪化してしまっているのである。いよいよ、何度も述べたゾーンの重さがこれから意識されてしまう。信用の買い余力は小さい。また、個人の現金(現物)は指数の急落がない限り大きな買いの傾きは示さないであろう。あくまでも買い支え主体

 このような状態のボックス相場でのストラテジーとして、皆、「安値で買い、吹き値で売る」を言うが、果たして得策なのであろうか?現在は「安値で買う」ことは忘れてよいのではないかと思う。「下で買いたい主体」と「上で売りたい主体」で明らかに後者が多い以上、「上で売る」ことだけを考えればよい地合いなのだと判断する。両方取ろうとするから往復ビンタもあるわけで、ボックスの動きのなか、現在は片道(上から下への動き)だけを取れば充分ではないかと思う。先物には買いも売りもあるが、現物に売りしかない以上、それでよい。昨日のような場面に売り(またはプットを買い)、利喰いを入れて次の上昇局面で再度売る、を繰り返すしかないのだと思う。ただし、上値は次第に限定的になる展開が予想される。ボックスのイメージとしては昨日の「12800円~13500円」を、250円程度レンジを切り下げる必要があると思われる。115ドル×110円=12650円を一時的に割り込む可能性も意識しなくてはならない。時期としては来週央までとする。あと、ひとつ気になる点。先々週の金曜日以降、シカゴのCMEがダウに比べて元気がない

2008年8月18日 (月)

080818米国市場_日本株コメント

 先週末の当欄で米国景気について触れたが、一つ誤解しないで頂きたいのは、これから米国景気が急回復をするということを述べているのではないということである。先週末に発表されたニューヨーク連銀景況指数も事前予想に反しプラスのサプライズ、また鉱工業生産・設備稼働率も予想を上回る良い数字であったが、あくまでも現段階で述べたいのは、1-3月期、4-6月期の企業収益がそれほど悪くなかったということと、7月以降のマクロ指標に明るさが出てきたということ、また、実物である住宅に「価格」と「需要」という関係が戻りつつあるということであり、結論として世論の「底割れ懸念」を鵜呑みにしてはいけない時間帯に入ってきたということである。

全体を見回して、雇用と金融機関に対する不安、また、その金融機関が結果的にもたらす信用収縮(マネーフローの縮小)が消費に与える影響を考えれば急激な景気の回復は有り得ないこと。これはこの先の毎月発表される自動車販売がおそらく証明する。毎月のように触れてきたが、米国ビッグ3の動向やピックアップトラックの売り上げなど見るまでもなく、この代替エネルギー熱のなか、日本車の売れ行きにおいて安いホンダのフィット、シビックが順調で、高いトヨタのプリウスが厳しいという今の状況に変化が見られない限り米国の景気回復を体感することはないであろう。

カラ売り規制が解除されてまだ数日。今後の動向について判断を入れる段階ではない(入れるのは危険である)ことを述べたが、今回のカラ売り規制についてS3マッティングという会社が出したレポートが米国で話題になっている。これは19銘柄の規制期間の動向をレポートしたもので、「株価には大きな影響を与えず、規制に効果はなかった」と結論づけている。同社のレポートによると19銘柄のカラ売りは同期間に約63%減少したが、GSE2社はこの間20%以上株価が下落しており、S&P500の上昇率5%を勘案すれば効果がなかったことが分かるとしている。また、バンカメの株価は40%も上昇しているが、逆にカラ売りは規制前よりも増加しており、カラ売り規制による影響ではないとしている。

この19銘柄だけにフォーカスしたレポートについて、私は非常に違和感を覚える。今回のカラ売り規制(借り株を手当てする前のカラ売りの禁止)というものが、実際にどのような心理的な影響をロング・ショート系のファンドマネージャーや投機筋マネー、ドンパチを繰り返した金融機関のディーラーに与えたかは実際にカラ売りを行っているファンド関係者にしか分からないことであろうと思う。実際に一番大きく反応したのが、本来は関係が薄いはずの商品市況である。これは投機筋への規制を恐れたポジションの手仕舞いが(商品)ファンド基準価格の下落を招き、それを見たファンド購入者の解約が相次いでおり、止まらない状況となっている。この動きは完全にトレンドを形成したと見るが、全ては心理的な影響が招いたことである。

 規制期間中にS&Pの業種別動向で金融株が30%もの上昇を示し、解除後の2日間で8%も下落したのは、このような心理的な影響の部分が大きく、効果はきちんと示現したと私は考える。また、この心理的な影響がどこからきたかであるが、7/24のストラテジー“ちょっと悲しい先進国”で、私が述べた[日本市場は“カラ売り先進国”で米国市場は“発展途上国”である。]という部分と繋がっている。

それは(ここではあまり字数を割いての説明は避けるが)、例えば、売る際の借り株の確認の仕方、また、リコール時(ファンドはプライムブローカーである証券会社から株を借りて売っているが、そのプライムブローカーがもともと借り入れている大元の貸し先が「返してください」とプライムブローカーに申し入れ、プライムブローカーもファンドに対して「返してください」という行為)の対応の差など市場カルチャーギャップである。

このリコールについていえば、日本市場においては成り行きでストップ高まで買いに行ってでも(それまで売られていた銘柄が急に朝1番からの妙な買い板で、それにディーラーがのって連日ストップ高をするのもこのリコールによる場合がある)返す一方で、米国では「返せないけどペナルティーで幾ら払えばいいの?」というやりとりが恒常的に行われているのである。日本市場に比べて、米国市場はこのような株式の決済機能についてかなりズボラである。(欧州市場はもっとズボラ)ズボラゆえに信用残高も(発表日を確定せずに)月2回しか発表できないのである。(それもついこの前まで月1回。。。)

先週も書いたが「もう1回、商品と株で仕掛ける?」と周りを見渡しても、なかなか皆が乗りづらい状況である。9月を迎えるにあたり、それまでの3月、6月と同じように金融ドンパチを行っているのにも関わらず反応が薄いことも、売りを煽りたい向きに今までとの違いを感じさせている。やはり、現段階での金融株動向については判断がつかないものの、少なくとも、3月、6月よりは底割れ懸念は確実に小さいといえる。

日本株。相変わらずの動きであるが、裁定は8/7~8/13の期間で1億1692万株減少し再び20億株を割っている。金額も弊社試算で丁度3兆円から2兆7800億円割れと2200億円程度減少した。この間の日経平均の下落幅は▲231円であるが、確実に先週火曜日からは先物の売り場面で解消売りも出されていた。それでも以前書いたように8月~10月は季節的には裁定買い残が大きく減少することはなく、買い残が逓増する季節。この裁定解消動向についても継続性にかけるのはリスキー。

先物動向は他社もそれなりに傾きを示したりはするものの、相変わらず2社の影響が大きい。先週金曜日(15日)の225先物の出来高が10万枚を3日ぶりに割ったのもNEの出来高が少なかったゆえ。

現物に対する外国人の売買意欲の減退に変化なし。ドルベースで指数を見る彼らにとってこの円安傾向は様子見の材料にもなっている。本日も先物主導で荒っぽい展開となっているが、先々週初に書いた先週末までのレンジ(12800円~13500円)を現在もなかなか抜ける動意は見られない。日中の動きは激しいが、オプションのボラティリティーは落ちた。9月限12500円プットの前場引け100円が妙に安く見えてしまう。保険の意味で買うのも一計か?

2008年8月15日 (金)

080815NARサプライズ(米国市場コメント)

昨日の米国株市場は8時半に発表された7月のCPI(消費者物価指数)が市場予想の+0.4%に対して実値+0.8%であったことが嫌気されて重苦しい雰囲気のなかで始まった。カラ売り規制が解かれてからの2日間で再度金融株が売り基調であったことも市場心理を不安に傾けていたと思われる。このCPIについてはノーコメント。原油先物が現在よりも20%以上高かったときの数字を含んでいる。因みに6月のCPIは+1.1%であったことを考えれば再度1%以下の伸びに留まったと見ることもできる。前年同月比の数字についてもノーコメント。インフレ圧力は“足許”で高まっているかどうかが大きなポイントであり、過去の数字で方向を判断すると誤ることがある。そして、それはトレンドをなぞる動きが終わってインフレ圧力が転機にさしかかったときに多く示現する。今がその時であると判断する。ドイツの7月のCPIが前年同月比で+3.5%と上方修正されたことは若干の意外感があり、トリシェも唸っているかもしれないが、同様の理由でコメントは入れない。この考え方を支持しているのが債券市場。昨日は寄りこそ売られたものの、結局買われて10年米国債は3.888%の引けとなった。債券に与えられた“安全な時間”は長い。

 一昨日に発表された8月のメリルリンチのファンドマネージャー調査における日本株についてのアロケーションに関しての小さな記事をどこかで見たが、今回の調査において重要であったのはインフレと米国に対する見方の変化である。

 世界経済がリセッション入りしているという見方が四分の一まで上昇する一方で、インフレに対する懸念を示す数値(コアベースのインフレが低下する可能性を支持する数値)はここ8年間で最低の水準にまで急落した。7月のCPIを問題にしている場合ではないのだ。メリルリンチのストラテジスト・コメント「インフレは過去の話」。これは昨日このコメントのなかで述べた[それでは、「商品買い、株式売り」が再度大きなトレンドを伴う動きとなるかであるが、「商品買い」については20%以下の確率(「穀物」25%の確率、「金」「原油」10%以下の確率)、「金融株のカラ売り」については50%の確率と見ている。(買いや買戻しの需給と違い、カラ売りの需給を予測して、あんこだけでなく、たい焼きの頭から食べようとすることは非常に危険な行為である。初動での判断はあてっこでしかない。)]の前半部分と通底する。

  話を昨日の相場に戻す。不安に傾いていた市場心理を好転させたのがNAR(全米不動産協会)レポート。その中身であるが、4-6月期の中古住宅販売は前期比▲0.8%となったが、増加した州が13と全米の四分の一近くにのぼったというもの。しかも、中古住宅販売価格の中央値が前期比で+5%と大きく上昇している。プラスに転じるのは5四半期ぶりのこと。ここで思い出して欲しいのが、先週の「080808米国市場コメント~グリンスパン発言から1週間~」での一節。[しかし、この動きに一旦歯止めをかけたのが、昨日の発表で皆がもっとも恐れていた6月の中古住宅販売(仮契約販売指数)。予想の▲1.0%が+5.3%はかなりのサプライズであった。これは昨夏の第一次サブプライムショック後にことの大きさを認識せずに市場が戻っていた昨年10月以来の数字。ゴールドマンはさっそく「中古市場が落ち着きを取り戻しつつある可能性を示している」とのレポート。。。]ケース・シラー住宅価格指数の前年同月比はまだ2桁のマイナスが続いているが、同指数の対毎月下落率は落ち着いている。少しずつであるが、実物である住宅に「価格」と「需要」の関係が戻りつつあることを感じる。

 そして、相場に勢いをつけたのがやはり金融ネタ。SIFMA(米国証券業金融市場協会)がGSE2社の大口ローン(通称:ジャンボローン)を限定的にではあるが、一部住宅ローン市場で流通させるというニュース。前述のとおりここ2日間で大きく下げていた(約▲8%下落)S&P金融株指数は+2.6%の上昇となった。しかし、カラ売り規制で30%上昇、解除後2日で8%下落、1日で2.6%戻す指数。。。実は、先週以降紹介していないが“金融ドンパチ”(金融機関による他の金融機関の収益予想の下方修正及びレーティング引き下げ)が再度起きている。そのなかでの方向感の無い動きが続いている。(昨日のコメントの後半部分)

 話を再度メリルリンチのファンドマネージャー調査に戻す。米国の景気について私は1-3月期、4-6月期と金融を除いた企業収益に対して一貫して「それほど悪くない」という姿勢を採り続けてきた。そして、それが今回の調査でファンドマネージャーの意識のなかにうまれつつあることを感じる。まずは、企業収益見通しで最も伸びが期待される地域で米国が2位となった。1位は無論新興国なのであるが、米国への期待が復活している。このことは通貨見通しでも見てとれる。ドルが過小評価されているとの回答が半数を超え、今後12ヶ月での通貨上昇・下落予想も63対10と差し引きで+53と大きなものとなっている。(先週述べた米国30年国債の入札結果はドルに対する信認行為である)因みに、この差し引き数字を6月から遡って列記すると、+36、+39、+31、+33。今回の8月調査で急増したことが分かる。原油下落とカラ売り規制による株価の安定はこのような意識変化をもたらすのである。現在、市場の米国景気の底割れ懸念は根強いものがある。連日のニュース報道もそうである。しかし、景気に株価が先行してきた歴史には、このようなファンドマネージャーの意識変化が世論に先行して生じてきたという背景があることも認識しておくべきだと思う。

企業収益予想といえばトムソン・ロイター社が有名であるが、同社の見込みはここのところ短期間で数字が大きく変化するので厄介なのであるが、それが金融セクターの見込みが大きく変化するからであると斟酌して数字を見ていくと、方向性としてはズレがなく予想してきたことが分かる。そしてその数字が第3四半期については5四半期ぶりに主要企業で増益に転じるとの見通しを示している。同社の見込みは7/1のクオーター入り日に既にプラス(前期比+13%弱)であった。金融機関の評価損拡大による最終利益の落ち込み見通しによって、どんどんその幅は小さくはなってきているが、先週末の時点でも+6%の見込みとなっている。ニュース等から感じてしまう米国の景気底割れ懸念を鵜呑みにするのは危険な時間帯に入ってきた。

再度、メリルリンチのファンドマネージャー調査。米国に対する見方の変化の一方で急速に日本株に対する関心が薄れているのが気になる。日本株の現在の配分比率のオーバーウェイトは22%に低下(7月30%、6月26%)、逆にアンダーウェイトは34%に上昇(7月28%、6月27%)している。両数字の引き算から6月、7月にやっとゼロ近辺のニュートラルにまで戻していた日本株の期待値(1月~3月が差し引き▲30%程度で推移していたことを考えればかなりのリカバリーであったのだが)が再度低下してしまったということである。これが現物株に対する見方。現物に対する動意が果たして来週以降戻るかというと、はなはだ不安である。裁定と先物の天下がまだ続く可能性が高い。

 映画「パルプ・フィクション」のような構成で恐縮です。

2008年8月14日 (木)

080814カラ売り規制が解けた途端

この有様?というような米国市場であった。日本株式はボックス内ながらも値動きの激しい相場となっているが、米国のボラティリティーはそれ以上である。今回も引き金となったのは穀物市場。7/5の日経新聞のサミット合意文書案報道以来の商品市場と株式市場の動向をまとめた文章を度々載せたが、そこでも指摘したとおり、最も敏感な動きとなるのは穀物。ゆえに毎日商品市況動向を書くのである。正直かなりしんどい作業ではあるが。。。

 「有様」=「商品買い、株売り」であることは言うまでもないが「商品買い」の動きは朝方配信した商品市況をお読み頂きたい。「株売り」の部分はやはり金融株。こちらの引き金はJPモルガン自らが「第3四半期以降も評価損が発生する可能性」を明らかにしたこと。一昨日の「7月以降15億ドルのサブプライム関連の評価損が発生している」に続くカミングアウトに前日同様金融株は敏感に反応し、2日連続でS&P500業種騰落率で「金融」がワーストとなった。

 今はまだ、これが“催促相場の始まり”であると断言することは早計である。周りを見回しながら「もう一回やる?」と顔色を窺っている手探り状態であることは昨日の「金」「原油」の日中のモタモタした値動きからも分かる。これは前述の7/5以降の流れをまとめた中で述べた「穀物を齧っていたネズミ」と「私」がまずは敏感に反応(もっとも、一旦相場が戻ったため、この反応は超短期的に失敗、その後成功)したものの、「金」「原油」は反応が鈍く、再度高値をとりにいってから下落の一途を辿った際の「初動」の裏返しと考えれば説明がつく。「金」「原油」は明らかに「穀物」に比べて鈍感である。

 それでは、「商品買い、株式売り」が再度大きなトレンドを伴う動きとなるかであるが、「商品買い」については20%以下の確率(「穀物」25%の確率、「金」「原油」10%以下の確率)、「金融株のカラ売り」については50%の確率と見ている。(買いや買戻しの需給と違い、カラ売りの需給を予測して、あんこだけでなく、たい焼きの頭から食べようとすることは非常に危険な行為である。初動での判断はあてっこでしかない。)

金融株のカラ売り支援には昔から「ファンダメンタルズ」がついているが、ここに来てもう一つ「資金繰り」が加わってしまった。一昨日非常に気になる数字が発表された。それは、(あまり報道されなかったが)FRBが11日に行ったTAF融資(3月の一連の施策の一環で、ここでもかなり詳しく説明を行った)状況である。FRBは今回初めて28日間だけでなく84日間TAFを行ったのであるが、落札金利がなんと2.754%とFRBが設定した下限金利2.04%を大きく上回ったのである。これはFRB自身かなりショックだったのではなかったかと思う。84日入札を行うこと自体が資金繰りの厳しさを反映、斟酌(しんしゃく)したものであるが、LIBOR(ロンドン銀行間レート)とほとんど差のない水準まで借りられるのであれば、FRB融資の意味、存在感、そして何よりも市場に対して「FRBは金融機関に対してコミットをしている」と思い知らせる効果が薄れてしまう。LIBOR水準なら米国の金融機関はいくらでも資金を借りたいのだ。これは3月のTAF施行開始時に落札金利がほぼFRBが設定した下限金利に近かったことを考えれば異常な事態である。この違いは何か?当時欧米金融機関の自己資本充足に力を貸したオイルマネー、政府系資金が今は静観を決め込んでいることにあると思われる。

しかし、ここ2日間の金融株の下げが19銘柄のカラ売り規制解除によることは明らかである。この部分について、私は[080722米国市場コメント「大恐慌の亡霊が笑ってる」]において、「私がSECならば迷わず銘柄数の拡大を発表する。SEC自身が待たなくてはならないことは、「需給に対する規制」という“最後に抜くべき刀”に自ら既に手をかけたのだという認識である。ここで19銘柄だけ、という中途半端な規制では刀が抜かれたのかそうでないのか市場は判断がつかないであろう。」と述べたが、その心配が杞憂に終わらない可能性が出てきたということである。

この資金繰り状況の悪化は9月の証券会社決算発表に向けて、再度、「金融ドンパチ」と「達磨落し」が始まる可能性を示唆している。7月の地銀数行に続いて破綻する金融機関が出る状況が懸念される。

それでも、それでも、今まで述べてきたように「催促相場」の後には再度「需給に対する規制」という刀を当局は抜くものとみる。

 GDP。昨日の日経新聞夕刊に私のGDPコメントが載ったが、昨日の夕刊、今朝の朝刊とGDPに対する同紙の記事は近年なかったほど力を入れて分析を行っている。これからのストラテジーのなかで度々用いる可能性があるので、再度関連記事をお読み頂きたい。

 さて日本株。先物・裁定コメントにうんざりされていらっしゃるかもしれないが、現在の相場が両者で説明されてしまうことも事実。朝の寄りつきからの15分であれだけ大きなロットを連日見せられ、「ほらほら、今日もこんなにやるよ」とアピールされてしまっては、そうでなくとも方向感、現物需給がない相場はただ動向を見守っているだけの日々となっている。

 乗りかかった船で2社の動向を書く。

         一昨日(12日)NE:225、▲450億円程度の売り、TOPIX、▲25億円程度の売り、CS:225、▲120億円程度の売り、TOPIX、▲200億円程度の売り。2社2先物合計▲800億円程度の売り

         昨日(13日)NE:225、▲310億円程度の売り、TOPIX、▲240億円程度の売り、CS:225、▲680億円程度の売り、TOPIX、▲300億円程度の売り。2社2先物合計▲1500億円程度の売り

          因みに月曜日(11日)は2社2先物合計+1150億円程度の買い(金額等は全て弊社推定で正確さを保証するものではありません。)

 めまぐるしく動向が変わるが、このような相場でも需給と相場方向が一致しているのは、実は先日述べたTOPIX先物需給。ここ6日間の日経平均騰落とCSのTOPIX先物動向を書く。8/6指数+340円、CS+117億円、8/7指数▲129円、CS▲336億円、8/8指数+43円、CS+253億円、8/11指数+262円、CS+160億円、8/12指数▲127円、CS▲200億円、8/13指数▲280円、CS▲300億円。にくたらしいほどピタリと符合。これも事実。

8/8はSQ。前夜NYも大きく下げていたので、このまま安く推移するかと思われたがTOPIX先物の買いでその後指数がプラスになったのは圧巻であった。

 そして、先週あれだけ騒いだCSのTOPIX先物建玉。8/1売り2万7615枚。8/8売り2万7238枚。・・・何も変わっていないのである。ボックスを抜けないわけである。

2008年8月13日 (水)

080813GDP_米国株コメント

 GDPが発表された。実質前期比▲0.6%(年率▲2.4%)は織り込み済みの水準であったが、内容的には先に発表された鉱工業生産等との違いが見える。

・鉱工業生産が4-6月期マイナスで2四半期連続のマイナスとなったこと、・7,8月見込みを勘案すると3四半期連続のマイナスとなり、年初から予想された景気の落ち込みが長引く可能性が高まったこと、・また、4-6月期の特徴として(それまでの景気拡大期の牽引役であった(大企業の)設備投資が急激な落ち込みを示したが、それが通常の4-6月期では起きないこと、それが今回示現したのは、それが1-3月期の急激な円高進行による影響であろうことは既に述べたが今回のGDPにおいて懸念された輸出の前期比マイナス寄与は+0.0ポイントでなんとか避けられた形。しかし、前期に比べて寄与度(貢献度)の落ち込みは明らかであり、交易条件の悪化がみてとれる内容である。

・一方で民間最終消費支出が前期比▲0.5%とマイナスとなってしまったが、これは一昨年7-9月期以来のこと。他のマクロ指標では確認されなかった消費の落ち込みが(通常は設備投資に先行して落ち込む消費が今回見てとれなかったこと自体が不思議ではあったが・・・)認識されたことになる。この理由は雇用者報酬の実質、名目の差が表していると思われる。名目で前期比▲0.2%(前年同期比+0.5%)が実質になると前期比▲0.5%(前年同期比▲0.2%)と更に落ち込む。これが物価上昇の影響である。

・結果的に名目GDPは前期比▲0.7%(年率▲2.7%)、対前年同期比で▲0.6%と2四半期連続のマイナス(1-3月期対前年同期比▲0.3%)となり、他のマクロ指標が示している2四半期連続のマイナス成長と符合している。

 米国で昨夜19銘柄のカラ売り規制が解除された。7/16の日本時間での発表後一昨日までの効果を見てみるとダウは約820ドル、+7.5%の上昇となっており、やはり買い戻し圧力が強く相場を上昇させたことが分かる。因みに同期間のS&P金融株指数の上昇率は+25%近いものとなっている。

 以前にも一度紹介した、ダウが上昇した日、下落した日に区分して、その上昇・下落率の合計と同日のシカゴ日経平均先物(CME)の上昇・下落率合計の比較表を載せることとする。

 これによると、昨年10/9~日本市場が大底をつけた3/17までは、ダウ(CME)の上昇率合計46.60%(40.30%)、下落率合計▲61.69%(▲76.80%)と、ダウが上昇しても下落しても日経平均は相対的なパフォーマンスが悪かったものの、3/18~7/15の期間ではダウ(CME)の上昇率合計31.48%(42.18%)、下落率合計▲39.72%(▲34.72%)とダウが上昇しても下落しても日経平均の相対的なパフォーマンスが良好であったことが顕著に表れている。そして、今回のカラ売り規制の期間を見ると、ダウ(CME)の上昇率合計16.80%(14.29%)、下落率合計▲9.32%(▲9.19%)と、下落率合計に差異は見られないものの、ダウが上昇した分ほどは日経平均が上昇できなかったことが分かる。これが買い戻し圧力の存在有無。

 今回、カラ売り規制が解除された後の展開予想については先週来述べてきたが、これで再度カラ売りの嵐となるとは考えていない。それは、商品市場が再度、もし、万が一、上昇するとしても、単なるリバウンドの動きでしかないのと同じである。もう、売ったところで、買ったところで、かつてのように皆が乗ってくる可能性が低いからである。そして、その背景にあるのが、先週も述べた、これから米国市場でもしサプライズが出るとしたら、需給に関するポジティブなサプライズの可能性が高いということである。3月、7月とサプライズな施策がとられたが、それは株式市場が底割れ懸念が高まったときであったことは確かである。そのため、そのような“催促相場”を一時的に投機筋を囃す可能性はあるが、あくまでもそれは、商品がこれから上昇するとしたらの“単なるリバウンドの動き”と同じであり、帰結する結果は同じであろう。ファンダメンタルズと需給の綱引きはまだまだ続く。米国株がボックスを下に切り下げて底割れする懸念がないとの見方に変更はない。080813_cme

2008年8月12日 (火)

080812日本株コメント

 「45日ルール」「欧州系外国証券先物手口」「NT倍率」先週来触れたテーマが本日の日経新聞に並んでいる。(もっとも、「欧州系外国証券先物手口」「NT倍率」は昨日私が取材で語ったので当然といえば当然であるが。。。)この「欧州系外国証券先物手口」について私のコメントが載っているが、今日も書かせて頂く。(先物に興味のない人には申し訳ないが、いつも先物を書いているわけではないのはご案内のとおりで、現在の株価説明力があまりにも高いので載せていることをご了承下さい。また、指数が持ち上げられて「あぁ、やっぱり上だ」とそれまでのショートポジションをドテンしたり、現物を買った途端に相場が下げることはよくあることですが、そのようなことにならないようにするには、やはり今回は先物動向と裁定動向に目を配る必要があると考えます。)

 8/11(日経平均+262円高) NE、225+595億円程度の買い、TOPIX+15億円程度の買い、CS、225+400億円程度の買い、TOPIX+159億円程度の買い、合計2社、2先物で+1170億円の買い

8/8(日経平均+43円高、SQ)NE、225+740億円程度の買い、TOPIX▲85億円程度の売り、CS、225+500億円程度の買い、TOPIX+250億円程度の買い、合計2社、2先物で+1400億円以上の買い

8/7(日経平均▲129円安)NE、225▲540億円程度の売り、TOPIX▲90億円程度の売り、CS、225▲370億円程度の売り、TOPIX▲330億円程度の売り、合計2社、2先物で▲1300億円以上の売り

先週1週間集計。NE、225+1300億円程度の買い、TOPIX▲310億円程度の売り。CS、225+400億円程度の買い、TOPIX+70億円程度の買い、2社合計、225+1700億円程度の買い、TOPIX▲240億円程度の売り。

(数字は全て弊社試算であり、決して正確さを保証するものではありません)

昨日が「先物が盛り上げた相場」という表現は正確には正しくない。確かに日経平均先物は10万枚以上の商い(7/31以来、8/5を除いて日経平均先物は10万枚以上の商いが続いている)であったが、一方でTOPIX先物の昨日の出来高は3万6500枚。これは、6/24の3万2100枚、6/12の3万4800枚、7/22の3万4700枚以来の低水準。この7/22は東証がダウンした日。いかに昨日の商いが低調であったかが分かる。昨日は完全に「日経平均先物が盛り上げた相場」。やはり裁定動向と日経平均先物が鍵を握る。

トピックス

・「45日ルール」解約による売りが一巡したのではないかとのコメントが日経新聞に載っているが、この部分については昨年、一昨年の跛行色を含めて後日述べることとする。

重要な変更。要旨のみ。過去4年間、期中に変更のなかった弊社のドルベース日経平均であるが遂に下方修正のサインが出た。コアレンジが5ドルずつ切り下がり、115ドル~135ドルに変更された。

2008年8月11日 (月)

080811日本株ストラテジー

080811nt  まずは、指数の動き。米国市場の買戻しは「商品買い、ドル売り、株売りポジション」のアンワインド(手仕舞い)の動きであるが、これは6/25のFOMC以降述べた「債券がキャッチボールの中心になっても、年初~3月中旬のように株式が3位になるとは限らない。商品市況の軟化シナリオによって2位をキープし、買戻し圧力によって上昇する可能性が高い」というシナリオに沿った動きである。

 この動きが継続するかどうかであるが、まずファンドのアンワインドは継続を見込む。先週、先々週も述べたようにNYSEの買戻し圧力はまだ存在する。注意すべき点は昨日の日経新聞朝刊に私のコメントとして掲載された12日のSECの19銘柄カラ売り規制が解除されることであるが、これによって再度金融株のカラ売りが急激に拡大するとは考えていない。理由は2つ。前述の買戻し圧力の存在と、先週も述べたように現在は、「12日で一旦カラ売り規制を解除し、このまま需給に手をつけない状態で株式市場が安定することを当局は望んでいる。これに対して、再度カラ売りを浴びせることは可能であるが、今までのように、他の金融機関、ファンドが同調するとは限らない。また、それで株価が下落した場合には、再度SECは需給に手をいれてくる可能性が高い」という懸念である。

 一方で日本株。米国株式が7月で一旦の底をうった動きとなっていることは繰り返し述べたが、日本株の動きとしては、他市場との比較で相対的に弱い横バイのボックス圏での動きを想定する。

 

理由はふたつ。まずは、日本株(現物)に春先のような買い戻し圧力がない(カラ売りが溜まっていない)ということ。二点目は、ここまでのストラテジーで「裁定買い残の増加によって指数が上昇し、信用買い残のやや重い13500円~14000円、非常に重い14000円~のゾーンでヤレヤレ売りを消化することを期待」したのであるが、ここもと事ある度に触れているように裁定買い残が急増しているピッチが早すぎるうえに指数上昇に寄与していないという事実である。公表されている8/6現在の裁定買い残株数は20億6120万株、怒涛の17連勝で弊社試算の裁定買い残金額は丁度3兆円に載せた。株数ベースで見ると5/22の水準(日経平均が丁度14000円の水準)であり、その4日前(5/16、日経平均14200円レベル)につけた戻りのピーク22億3000万株弱まであと1億7000万株と迫っている。先週の金曜日はSQであったため、裁定株数が減少していることが推測されるが、それでも現在のペースでいけば今週にも戻りのピークレベルにまで達する勢いである。

ここで注意して欲しいのは、言いたいことは、これから裁定買い残が減少トレンドを描くということではなく、先週述べたようにどのような増加場面でも1週くらいはポジション調整によって裁定買い残が減少し、日経平均が400円~500円程度下落する場面があるということである。そろそろそのレベルに近づいているという懸念をここで述べたいのである。

このシナリオが示現すると、前述の信用買いのゾーンはやはりこれからも重くなってしまうことが予想される。幸いにも今回の裁定買い残増加は現物として日経平均銘柄で行われていることが顕著であるため、(週次の信用動向で繰り返し述べたように、日経平均銘柄を中心に積み上げた)信用買い超銘柄で救われつつある銘柄も散見される。これらのポジションについては一旦軽くすることをお勧めしたい。先週述べた今週までのコアレンジ12800円~13500円を先物中心の荒い動きで超えたとしても、利喰いもあり、その後14000円台を超えていくような上昇トレンドを今月描くことは難しく、レンジを250円程度上方シフトする程度で今月のコアレンジ予想は充分であろうと判断する。

トピックスを3つ。

・私も参加しているとある(機関投資家)ファンドマネージャー調査で今週の日本株の見方が急に強気一色となっている。そして、これが非常にあてにならない。

・裁定買い残の急増がもたらしたもの=NT倍率の上昇。 NTプレイヤーがここから日経平均を買い、TOPIXを売るとは思えない水準。(グラフ後掲)

・先週木曜日、金曜日の2社の先物動向。

8/7NE、225▲540億円程度の売り、TOPIX▲90億円程度の売り、CS、225▲370億円程度の売り、TOPIX▲330億円程度の売り、合計2社、2先物で▲1300億円以上の売り。

8/8NE、225+740億円程度の買い、TOPIX▲85億円程度の売り、CS、225+500億円程度の買い、TOPIX+250億円程度の買い、合計2社、2先物で+1400億円以上の買い。

方向感のない先物主導の展開は続く。イブニングはNEが相変わらずの主役で荒い値動き。

2008年8月 8日 (金)

080808グリンスパン発言から1週間

 前日引け後に決算が発表されたAIGが既に時間外で下げていたこともあり(結果的に前日比▲18%の下落)、寄り付きから米国株は軟調な動きであった。昨日発表された経済指標は1勝2敗。まず8時半に発表された先週の新規失業保険申請件数は事前予想の42.5万件を大きく上回る45.5万件で、トレンドを表す4週移動平均も40万件台に乗ったことから雇用の厳しさが改めて認識された。また、民間の調査会社トムソンの7月の既存店売上高(主要小売大手)は+1.1%増(4ヶ月ぶりの低水準)と市場予想(+1.2%増)を下回った。(ICSC7月チェーンストア売上高は前年同月比+2.6%増)。この数字を戻し減税効果が薄れた結果とネガティブにとってウォルマートなど小売株が下落、ダウは9時半過ぎには前日比▲160ドル近く下落していた。雇用と金融というファームな不安に加えて消費も不冴え状況では致し方ないというところ。

 しかし、この動きに一旦歯止めをかけたのが、昨日の発表で皆がもっとも恐れていた6月の中古住宅販売(仮契約販売指数)。予想の▲1.0%が+5.3%はかなりのサプライズであった。これは昨夏の第一次サブプライムショック後にことの大きさを認識せずに市場が戻っていた昨年10月以来の数字。ゴールドマンはさっそく「中古市場が落ち着きを取り戻しつつある可能性を示している」とのレポート。。。

 もっともこの日の主役はECB理事会後のトリシェ発言。最初の段の展開であればドルが売られてしかるべきところが、そうはならなかったのは強く景気の減速リスクを同氏が述べたため。もともと利上げなどしたくなかった同氏が利上げを前回行ったのは“世界3大アレルギーであるドイツのインフレ”に配慮したもの。そのドイツの景気がここのところ明らかに鈍化していることと原油価格が落ち着いていることから、インフレリスクに少し触れた後は言いたい放題の印象。「減速リスクは具体的となっている」「年半ばのGDP成長率は低下する」「4-6月期、7-9月期は特に弱い」直近年末に向けてユーロのドルに対する弱気な見方が市場で支配的になりつつあるが、全く意に介していないのは無論原油価格への効果があるため。これでドイツがおとなしくしていてくれれば同氏にとってコンフォタブルである。

 結果、債券に与えられた“安全な時間”は更に長くなった印象を受ける。6/26に述べたこの「債券」が資金キャッチボールに加わり、「遂には主役に躍り出た」という考えは当面変更する必要はない。先日述べたドイツ国債の動きを見て頂きたい。もたもたしている印象を受けがちな米国債もきちんと戻り歩調である。先週はGSE2社支援の話もあって国債の増発懸念が広がったが、昨日行われた30年国債の入札で応札倍率は2.40倍と、前回の1.82倍を凌ぐものとなった。よく考えて欲しい。前回は2月。つまり狂乱的に債券が買われていった1-3月期に行われた入札よりも結果が良いのである。度々紹介した中央銀行や機関投資家の応札態度である「顧客の応札」は42.9%と、前回の10.7%を上回っている。ドル安懸念を各国中央銀行が抱きながらもこの数字。このままでいけば、散々言われたドルの底割れ懸念も年内はもう言われないのではないかと思われる。7/29のシカゴ通貨先物の投機筋残高でユーロも円もドルに対して売り超となっている。ユーロは6/17以来、円は6/24以来のこと。ただし、誤解しないで欲しいのはドルがこのまま強くなるということを言っているのではない。直近の強さが続くということではなく、「ドル暴落懸念」が消えるということである。

 大きく下落している商品市況であるが、原油が値ごろ感から再度上昇するとか、また貴金属についても再度上昇に転じる(スイスUBS)という強気なレポートが出されているが、全く琴線に触れない。ここで債券を買わないで商品をロングするグローバルマクロのファンドマネージャーはいないであろう。同じく7/29のCOMEX(ニューヨーク商品取引所)の金先物投機筋の建玉、18万2319枚。ピークから2万枚減少したが、まだ同枚数くらいは減少する余地があると見る。

 

となると、同ストラテジーのファンドやCTAにとって、上がろうと下がろうとあまり関係なく、傾けたポジションを採りたくないというのが「株」に対する見方。そのため、日米ともに方向感が薄れたジェットコースターのような展開が続いている。ボラティリティーも大きい。先週のグリンスパン発言以降、特にその動きは強まっている。FOMCも変更なしであったが、結局この1週間、何も変わっていないのである。指数の動きが、ただ金融株が買い戻された日に上昇し、売られた日に下落しただけのこと。これを日本株においては「金融株」を「決算の悪かった主力株」に置き換えて見ればよい。煽っているのが、米国では「金融株をカラ売りしてきた金融機関」、日本では「裁定取引」と「先物ショートであった証券会社」の違いである。容易にボックスを出ない動きが続く。

2008年8月 7日 (木)

080807裁定買い残コメント

 裁定買い残の増加が止まらない。繰り返しで恐縮であるが、7/11に株数15億610万株で底を打ち、現在発表されている8/4まで15日連続で増加し、金額も2兆1600億円割れから2兆7300億円程度(弊社試算)にまで増加している。指数動向に関わらず、ここまで一途に増加することは非常に珍しい。

 今年の春先の裁定買い残の底は3/7の週の金額ベースで2兆732億円であったが、①ここから4週間で2兆8000億円程度にまで増加し、②更に4週間で3兆2500億円にまで増加している。ここでなぜ一度刻んでいるかというと日経平均(以下、指数)の推移を述べるためであるが、①の期間で指数は12782円→13293円と500円程度上昇し、②の期間でも13293→14049円と650円程度上昇している。

 しかし、今回については7/11の指数13039円が8/4時点で12933円と逆に100円下落している。一昨日、昨日の相場を考えても裁定買い残が減少したとは思えないことから、現在の指数レベル(13050円(12:45現在))を考えると今回の裁定買いが指数の上昇に寄与していない状況が分かる。これは、日本株のカラ売りが溜まっていなかったことの裏返し(7/17、18と米国市場の買い戻し上昇についていけなかったことからも分かるが)でもある。カラ売りによって指数も下げ、その後カラ売りの買戻しと裁定買い残が増加する際には指数は大きく上昇する傾向にあるが、今回は違うということである。

 こうなると心配なのはこの買い残が解消される時である。裁定の季節動向としては、例年8月~10月というのは実は増加することが多い。それでも、この現在の連日増加が継続することは考えられない。一度ポジションを軽くする動きというのは必ず見られる。過去1年間に裁定買い残が増加する途中で1週間だけ解消売りによって残高が減少した際の指数の動きを検証してみる。

 07年9/7の週、裁定残1400億円減少、指数▲447円下落。07年12/14の週、裁定残4700億円減少、指数▲442円下落、08年5/9の週、裁定残3000億円減少、指数▲394円下落となっている。やはり指数は下落する。今回、指数13500円から上の信用買いが重いゾーンを抜ける前にこの解消週が示現した場合は、ますますこの水準が重く意識されることとなる。

2008年8月 6日 (水)

080806日本株(先物)コメント

 また先物レポートとなってしまい恐縮であるが、昨日のニューエッジ(以下NE)はザラ場(立会外含む)で225先物(ラージ換算)933枚の買い、TOPIX先物で595枚の買い(合計195億円の買い越し)。“夜な夜な主役の舞台”となるイブニングで225先物(ラージ換算)1175枚の買い(152億円の買い越し)と大きさが目立った。先ほど書いたように欧州市場がソシエテジェネラル決算を好感して上昇したことと符合。クレディ・スイス(以下CS)はザラ場で225先物(ラージ換算)1871の買い(金額243億円の買い越し。しかし既報のとおり一昨日は、ほぼ同枚数の売りがあった。TOPIX先物は172枚の売り(金額21億円)。イブニングで225先物(ラージ換算)909枚の売り(金額118億円)。(全て弊社推計と市場で言われている数字であり、無論正確さを保証するものではない。)

 先物レポートとなってしまう理由は昨日書いたとおりであるが、今週はオプションSQであるが、13000コールにNEの3500枚超の買い、ドレスナーの2500枚超の買い、UBSの1400枚超の買いがある見込み(弊社推計と市場の話はこの枚数でほぼ一致しているが、無論正確さを保証するものではない)、13000プットにドイツの4400枚超の買い、大和SMBCの2000枚超の買い、UBSの1600枚超の買いがある見込み(同)。4月と同じくSQまでは特にデリバティブ主導の動きが相場を支配する展開が続きそう。

昨日の答え。「外国人のTOPIX先物の売買動向」

以前にも述べたかと思うが、昨年の上海ショックまで、外国人の現物と先物の動向が同方向であることが多かったものの、同ショック以降、現物は買ってもTOPIX先物は売るという動向が年末まで続いた。そのため、外国人が買い越したと言ってもTOPIX先物が売り越しとなっている期間はあまり大きな指数の上昇は見られなかったのであるが、今年に入り現物、TOPIX先物が同じ方向になる傾向に戻っており、それが、指数に大きな方向性を持たせている。表の最終7/22-25はそれが顕著に出た週であったということである。現在のTOPIX先物の建玉上位証券会社を見ても、ドイツ、CS、GS、UBS、NE、パリバなど外資系がずらりと並ぶ。080806topix

080806 FOMC声明文反応の違い

 まずは、マーケットメモを素に小林が起こしている今朝の米国株概況をお読み頂きたいが、ソシエテ・ジェネラルの決算が発表されたのは昨日の日本時間の午後2時過ぎであった。純利益が前年同期比で6割を超える減益となったことから、欧州市場での反応が非常に注目されたのであったが、その欧州株が総じて堅調で特に金融株の上昇(買戻し)が目立ったため、FOMC前にあのような上昇トレンドを米国株は描くこととなった。

 思い出して欲しいのは前回FOMC(6/25)のこと。翌日のストラテジーで声明発表からの1時間で、私が強く感じたことを述べた。その後も度々引用したこの時の文章の一部を再掲させて頂く。

【 しかし、昨日の声明、及びその後の1時間足らずの相場が二つの大きなインプリケーションを与えた。重要なことを述べる。一つは「債券」に“安全な時間”が与えられたということ(この“安全な時間”とは買って安心な時間という意味であるが、勝手に私が作った言葉なので、あまりよそでは使わないほうがいいです)である。先週末と昨日、金利先物がどのレベルまで利上げを織り込んでいるかを述べたが、現在、50%程度まで再上昇している次回(8月)の利上げ織り込み数値はこれから徐々に下落していくものと考える。~中略~「商品」「株式」間のキャッチボールに完全に「債券」が加わる、しかも一つ目の理由によってかなり中心的な受け手となる可能性さえあるということである。4月の終わりに「株式」と「原油」の逆相関が急激に高まりつつあることを述べたが、その後の経過はご覧のとおりである。~中略~今回、株式上昇のリスクシナリオとして「債券」に再度資金が向かうことを述べてきたので、この部分についてもコメントを加えなくてはならない。一時的に先物主導で連動性が高まるものと思われるが、「株式現物」のポーションを落として「債券」に振り向ける動きは限定的であると考えている。資金の中心も新たな円キャリートレードであろう。1-3月とはこの点が大きく違う。一時的な連動性の高まりの後、ミニクラッシュを経て株式が買い戻されるまでの期間限定の動きである。また、原油相場が下落基調となれば、「債券」とともに「株式」も玉の受け手となる可能性もある。この点もこれまでと違うところである。~中略~時間軸を考える。イメージは米国株式が7月初旬~中旬には底入れ、8月利上げなし、米国マクロ指標での住宅を除く底入れ感が出る、利上げは早くて9月。今回の声明文によってFRBは充分に市場との対話時間を持つことを示したと思われる。 (その後利上げについては年内なしと述べた) 

そして、昨夜も前回と同じく金利政策の変更なしとなったが、反応は大きく違うものとなった。FOMCのコメントについて前回と今回のニュアンスの違いは、それぞれの時点で市場へ配慮を行った結果であると考えている。

まずは前回(6/25)であるが、異例であった一連の“ドル防衛発言”を行い、「利上げ→ドル高→原油高封じ込み」という事前のシナリオがFOMC前2週間の経済指標の悪化によって利上げを見送らざるを得なくなったことを受けて、「インフレ圧力の存在(利上げの可能性残し)、景気悪化懸念は後退(利上げできなかった代わりに、利下げの可能性を否定)」と手詰まりとなったFRBが精一杯のリップサービスを行ったのであるが、今回は商品市場が壊れてくれたのでインフレ亢進リスクは薄れているものの(ここもとの物価指数について私がコメントを入れないのは商品市場が動揺を示す前、6月の数字であるから)、「ドル高政策の為にも利上げの可能性を捨てるコメントはできない」ので、その代わりに、株式市場、景気悪化懸念に配慮して「利下げの可能性も捨てていないコメントを入れる必要があった」のである。それが、「景気下振れリスクは幾分縮小した」という文言削除につながったと私は考えている。市場との対話時間を持つ姿勢をきちんとFRBは守っている。

これからの米国市場の動向について考察するうえで考えなくてはならないのが、この景気下振れリスクと株式需給であることは言うまでもない。

米国の企業決算であるが、私は1-3月期に続いて4-6月期も金融、住宅、自動車を除けば、事前の懸念よりは良い印象を受ける。7-9月期は減税効果の剥落による落ち込みが予想されているが、これから先のテーマはこの剥落と商品バブルの剥落との綱引きである。無論、政府部門支出が与えるGDP数値の落ち込みと後者が指標に与える好影響ではスピードが違うためV字の回復は望むことはできないが、金融、住宅を除いたミクロ指標の底割れは想定していない。しかし、マクロ指標としては雇用と住宅が市場の材料として注視されがちで、マクロとミクロの市場が感じる誤謬はまだ続くであろう。

そして株式市場であるが、月曜日にまだ金融株の買い戻し圧力が大きく存在することを述べたが、気になるのがSECの19銘柄のカラ売り規制がいずれ期日を迎えるということと、この延長が認められた際に銘柄数の拡大が見送られたということである。FRBは市場との対話時間を持つ姿勢を守っていると書いたが、3月、7月にFRB、SECが時間を待たずに対応策をまとめたことに対して私は評価を与えているものの、残念なことにそれらは全て「株式市場が大きく下落し、市場が催促するのを待って」まとめられたモノである。このようなところにも対話時間を持ってしまっている。SECコックス議長がここで述べた私案と同じくカラ売り規制銘柄数の拡大を示唆したものの、それが決定されなかったのはヘッジファンド業界の猛反対であった。そういえばポールソン財務長官はヘッジファンド向けのプライムブローカーとして1位、2位を争う証券会社の会長兼CEO出身である。

FRB、財務省、SECの期待していることは、これ以上需給に手を加えない状態で市場が買い戻しによって下値不安が薄れていくことであるのは確かである。しかし、19銘柄の期日が終わり9月の証券会社決算に向けて再度信用不安の広がりが起きて株価が下落した場合は再度需給に対して刀を抜く施策を打つものと考える。つまり、期待する展開となる場合はもちろんのこと、そうでない場合も株式市場の底割れはないと考えている。それほどカラ売り残は多い。

まとめると、米国株式市場はことある度に雇用と住宅関連材料で景気悪化懸念がスポットを浴びて下落するものの、買戻しの存在によって反発するボックス内の動きがまだ、続きそうである。しかし、月曜日の繰り返しになるが、米国市場においてサプライズな材料としてはネガティブ要因よりはポジティブ要因の方が起きる可能性が高いと考えている。昨日の急騰は、もしそのような材料が出た場合の反応を示唆しているものと思われる。(サプライズ材料の参照は「080804日本株ストラテジー2」)

2008年8月 5日 (火)

080805日本株コメント

 昨日ラジオをお聴きになった方には一部重複する内容で恐縮であるが、昨日書いた外国人の先物動向と先週金曜日の相場急落について述べると、7/22-7/25に外国人の先物が3000億円の買い越し(これと裁定買い残増加によって指数上昇)となったのであるが、先週の金曜日のニューエッジ(以下NE)、クレディ・スイス(以下CS)の手口を見てみると、ザラ場でNEが225先物4368枚の売り(ラージ換算)、CS225が先物5084枚の売り、TOPIX先物4921枚の売りとなっている。これを金額に換算すると1850億円程度の大きな売り越しであったと推測される。前述の3000億円と金額を比較して1日での金額の大きさがお分かり頂けると思う。1時間あたり両社で3000枚程度は先物の売りが出されていたことになる。

 「金曜日の下落について幾つかの要因が重なった」とラジオで述べたが、そのひとつ目がこれである。他は、急ピッチで増加した裁定の解消が出される局面があったことと、決算発表に伴うディーラーとディーラー的な個人投資家の動きが、結果的に個人の狼狽売りを招いたということである。また、昨日述べた(本日の日経新聞の「まちかど」にも出ていた)ヘッジファンドの売りも見られた。

 話を先物に戻すと、昨日の両社の動きはNEがザラ場で225先物を1016枚売り、TOPIX先物で1023枚売り(合計260億円の売り越し)、CSはザラ場で225先物を1841枚売り、TOPIX先物は471枚の買い(合計で182億円の売り越し)となっているが、驚いたのは、イブニングでNEが225先物3245枚の買い超(買戻し?420億円)を行ったことである。昨日は、ザラ場でドイツが225先物で3047枚の売り、UBSも1400枚の売り、モルスタも1556枚の売りとなる一方で、リーマンが(買戻しと思われる)5835枚の買いとなっている。(リーマンはイブニングでも115枚の買い)かなり、外資系の動きが激しくなっており、ますます、先物主導の展開で投資家が入りづらい相場となっている。

 主体別動向をここでよく紹介しているが、主体別としては、証券自己、個人現金、個人信用、外国人、年金、事業法人、投資信託を主に追っている。これら各主体を現物売買、225先物売買、TOPIX先物売買の19の動向(個人は現物のみ、「現金」と「信用」に分ける)に区分したとして、最も指数との連関性が高い動向はなんであるかを推測してみて下さい。答えは明日説明とともに載せることとします。

2008年8月 4日 (月)

080804日本株ストラテジー2

 相場が「ファンダメンタルズ」と「需給」の綱引きであることは常に変わらないことである。7/15(現地)のバーナンキ、ポールソン、コックスの3者揃った議会証言においてコックスがカラ売規制について言及し、その数時間後に19銘柄の規制を発表したことによって7/16、7/17の2日間でダウは484ドルも終値ベースで上昇したものの、日本株が場中に上昇することはなかった。これは、米国株については金融株を中心とした信用売り、カラ売りが溜まっていた一方で、日本株にはカラ売りが溜まっていなかったことの表れである。現物の買戻しが無い以上、相場が上昇するためには先物の買戻しか現物の新規買いが必要である。私は日本株について、この現物の買いは季節要因が終わった裁定取引がもたらすであろうことと、先物の売りポジションの状況についても数度説明した。そして、日本株も裁定買いと先物の買い戻しによって上昇した。ここまではストラテジーとして誤りは無かったと思っている。

 指摘したように裁定買い残の底は7/11であった。この時の裁定買い残株数は15億610万株。これが公表されている7/30現在で17億8836万株まで増加している。また、これを金額ベースでみると2兆1581億円であったものが、弊社試算で2兆6000億円を超える水準にまで拡大している。特筆すべきは、7/11以降、指数の上昇・下落に関わらず連日裁定買い残が増加しているということである。(①)

 そして、先物売りの買戻しであるが、7/22~7/25の週に外国人が3000億円を超える買い超となっている。(②)この週の上昇によって主体別動向における個人の売買は現金(現物)が1390億円弱の売り越し、また信用も640億円弱の売り越しとなり、一部整理が行われることとなった。(しかし、整理が行われた信用はあくまでも13500円~14000円ゾーンで作ったやれやれの売りであり、14000円オーバーで作った4000億円以上と思われる信用買いについては手付かずと思われる。)

ここまでは、輸出企業の落ち込みと設備投資の減速という「ファンダメンタルズ」(売り)に対して「需給」の「需」(買い)が戦っていたといえる。ここまでは「080716SECコメント」で述べた“あくまでも一旦の買い戻しであってその持続性には疑問がある。”の前半部分であった。しかし、問題なのは、この①、②のピッチの速さである。ここにきて、4-6月期の決算発表がピークを迎えたのであるが、市場ではこの2年間、ディーラー、個人が中心となってこのイベントで売買を活発化させてボラティリティーの高い相場形成となる傾向があるが、今回はいつもにも増してその傾向が強い。低調な売買代金にこの金額が含まれていることを考えれば実質的な売買代金は更に小さいことが分かる。その状態に、ピッチが早かったことから①の解消が週末の木曜日、金曜日に出される場面が散見された。現在は、「ファンダメンタルズ」(売り)、そして「需給」の「給」(売り)と双方が指数を下に持って行こうとしているのである。

そして、ここでひとつ気掛かりなことがある。それは、半年前も1年前も紙上を賑わせたのに今回は誰も口にしていない「45日ルール」である。(これは、ヘッジファンドで国内向けに決算期日を設定した分の解約ノーティス(告知)が45日前というファンドが多いということからそう名付けられたようであるが、)昨年11月発売の日経マネー紙においてこの8月の小反落について予想を述べたが、実際に昨年、一昨年と8月初旬から中旬にかけてヘッジファンドの解約に伴うと考えられる大きな手仕舞いが起きている。(もっとも、これは現物の売りだけではなく、売っていた銘柄の買い戻しも行われるのであるが、それまでのバリュー、グロース、ボラティリティーなどのファクター・リターンの推移が大きく逆行する傾向がある。)そして、この動きがやはり先週末から一部出始めていることを感じている。

今回のストラテジーの変更については、まずは謝らなくてはならない。先週金曜日、米国シカゴの日経平均先物が13335円で引けたが、前日に急速に主力株及びそれまでやや値もちの良かった銘柄の売られ方を見てかなりヒアリングを行った結果、このような変更となった。かつてないほどの、朝礼暮改で本当に申し訳ない。

ここから底バイの期間入りとなるが、朝方述べたコアレンジの下については、ここを切ると以前お話した、日経平均を0.9で割るやり方で14000円から上の信用買いが非常に厳しい状況となることからオーバーシュートの売りも覚悟しなくてはならない。先物の打診買いは慎重にしなくてはならず、ここはまだその水準ではないと思われる。

先週、ドイツ国債が急伸している。このことについては3月にイタリア国債とのスプレッドでお話したことがあったが、欧州も完全に債券に“安全な時間”を与えており、ファンドの動きとしては、この先世界的にやはり債券に資金が回りやすい地合いが続くと思われる。

現物株のストラテジーとしてここで何を買うべきかとのコメントを頂くが、以前、弊社のシステムがピックした銘柄を紹介する際に、コードで6300番以降を掲載しなかった。これは、3月以降述べてきた(機械、)電機、自動車の決算に対する懸念もあったのだが、今回の決算は製品への価格転嫁のし易さが大きく影響している。鉄鋼などは電機・自動車に対する価格転嫁がスムーズにいったものであり、両業種はこれを受けたものの川下への転嫁が行えなかった影響が強い。ロングの銘柄選択においては、やはり商品市況がこれから軟化する傾向にあるということと、この製品への価格転嫁が行えているかどうかが鍵となろう。そして、信用の買い超、売り超もここにきて大きくファクター・リターンとして説明力を高めている。商品相場の下落が寄与する業種、そして既に価格転嫁を行った業種のうち信用売り超の銘柄がロングの候補となる。業種で述べると食品、紙パ、電力、小売にそれらの銘柄を見つけることができる。また、医薬品、情報通信、卸売の一角にも該当する銘柄があるかなりディフェンシブな布陣だ。また、大きく値を崩した主力株であるが、機械などに決算内容に比して売られすぎの感が強い銘柄もある。これは信用買い残の影響であろう(コマツに代表される機械銘柄や、業種は違うが、その他製品の任天堂にしてもそうである)。また、自動車についても大手は別にして、決算堅調・信用売り超の銘柄も存在するが、電機については電子部品の落ち込みについて依然見方を変更していない。

このように日本株の需給については、暫く「需」の動意に欠ける展開となる可能性が高いが、米国については例え再度「(利下げの)催促相場」が起きようとも、サプライズな材料としてはネガティブ要因よりはポジティブ要因の方が起きる可能性が高いと思われる。それは、特に需給面からである。無論、想像の域を超えないが、CFTCの商品市場規制の発表、SECのカラ売り規制の継続(強化)、そして、日本のバブル崩壊期がそうであったように、金融機関の統合である。これらのサプライズ材料が出された際には、やはり、7/16以降と同じ相場が示現するのであろう。まだ、NYSEの買戻しは続いている。

080804日本株ストラテジー

 まず結論から述べると先週述べたコアレンジのレベルについて上値を300円、下値を400円下げ12800円~13500円とし、期間についても来週までと延長する。理由については追って述べることとする。

2008年8月 2日 (土)

080802米国市場コメント

NYダウ      11326.32(前日比▲51.70ドル)

ナスダック      2310.96(前日比▲14.59P)

注目された7月の雇用統計は非農業部門の雇用者数が前月比5万1000人減と、7カ月連続のマイナスとなったものの、市場予想が6万5000人減であったため大きなサプライズはなかった。しかし、失業率は5.7%と悪化した。アジア株、欧州株の下落の流れを受けてダウは寄り直後から急落。10時過ぎには前日比▲90ドル安まで下落し、一昨日のグリンスパン発言からザラ場時間2時間弱でダウの下落幅は▲200ドルを超えることとなった。

しかし、売り一巡後はもみ合い相場。7月の米サプライマネジメント協会(ISM)製造業景況感指数が市場予想(49%前後)を上回り、50.0%と辛うじて製造業の活動分岐点とされる水準に踏み止まったことから追随売りは見られなかった。週末のポジション調整が終わった後は全体的に薄商いで、1日の出来高はNYSEで約12.2億株にとどまった。

オートデータ社の月次販売台数で米国ビッグ3の低迷がより顕著となったことから自動車株が安く相場全体の雰囲気を悪化させた。結局、GMは7%超の下落。

S&P500業種(10業種)は9業種が下落したが、唯一プラスであったのが「金融」。金融ネタが2つ。シティーとの金融商品保証で10億ドルの損失を計上していたアムバックの支払額が8億5000万ドルとなったことが発表され、1億5000万ドルが引き当て超から利益計上(一昨年までの日本の金融機関で大きく計上された「引き当て金戻し入れ」と同じ)されるとの見通しでなんと+50%高。住宅ローン関連資産の売却が検討されているとの観測が伝わったリーマンも7%高と買い戻しの動きが昨日も見られた。

シカゴ日経平均先物は続落。終値は13105円(大証比+75円、イブニング比▲5円)。高値は13320円、安値は13025円。日中の値幅は大きいものの、相変わらずシカゴは日本市場よりも確りの印象を受ける。

2008年8月 1日 (金)

080801米国市場コメント

*またですか、グリンスパンさん

 昨夜の下げについてはGDPが市場予想に届かなかったためとする論調が多いが、大きかったのは朝方の概況でも書いたようにグリンスパンの引け前の発言であった。

 8時半に発表された4-6月期GDPは+1.9%(対前期比年率)と市場予想とされていた+2.3%に届かなかったため、寄り直後は売られたが、この時点で材料視されていたのはむしろ同時刻に発表された先週の新規失業保険申請件数。こちらは予想が39.3万件であったのに対して44.8万件(前週は40.6万件→40.4万件に下方修正)と悪かった。一昨日発表された7月のADP全米雇用レポートが前月比9000人の増加(事前予想▲6万5000人減)と、かなりのポジティブ・サプライズであったため、ここ数ヶ月お読み頂いている方はお分かり頂けるかと思うが、「またADPの数字と雇用統計が大きく違うのではないか」という疑惑が広がったのである。二ヶ月前6/6の“原油高、雇用統計ダブルショック(ダウ▲394.64ドル)”をリマインドした向きもあったであろう。(もっとも当時とは原油を取り巻く情勢が大きく違うが)この時の失業率5.5%(前月から0.5%も悪化)の主因は学生の求職人口の増加であったが、今回についても失業保険の給付延長という要因がある。市場も今夜発表の失業率に懸念を抱きながらもまずはGDPと先週の新規失業保険申請件数については材料として消化しつつあった。

 市場の雰囲気を明るくしたのは9:45頃に発表された7月のシカゴ購買部景気指数。市場予想が49.0であったのに対して発表された数字は50.8(!)。好不況の分岐点とされる50を半年ぶりに上回ったこともあり、11時にかけて90ドル程度前日比で下げていたダウは20ドル安まで戻すこととなった。今朝の商品市況でも書いたが、先週来、7月のミシガン(消費者態度指数)、6月の耐久財受注、7月の消費者信頼感指数、そして昨夜の7月のシカゴ購買部景気指数と予想を上回る経済指標の発表が続いている。(眉唾のADP雇用レポートは含めない)これは政府のチェック給付の施策がやはり一定の効果をもたらしたと考えられる。(また、GDPについて私見を述べるとそれほど悪く無い印象を持っている。純輸出+2.4%、個人消費+1.5%、設備投資+2.3%。マイナス要因は在庫投資の落ち込みであり問題はない。住宅投資は▲15.6%と厳しい数字であるが、前期の▲25.1%よりは下落率が縮小している)

(*ここで、今夜の雇用統計を占ううえで重要となる雇用に関する一連の指標をピックアップしてみると、(一昨日書いたが)7月の消費者信頼感指数ではネガティブ(職を探すのが難しいとする数字は30を超えた)、ADPレポートは非常にポジティブ、(~7/25)新規失業保険申請件数はネガティブ、そして7月のシカゴ購買部景気指数における雇用指数(先月46.7→45.9)はややネガティブとADP以外は依然として厳しい数字が並んでいる。)

 しかし、11時を過ぎるとその前2日間でダウが450ドルも上昇したこともあり、利喰いも入って方向感に乏しい展開が続いた。今日のダウは100ドル安くらいか、と思われたものの、一気に3時前から急落したのはグリンスパンのCNBCインタビュー。「住宅市場は底入れにほど遠い。(この発言を聞くのは何度目であろう)」に加えてファニーメイ、フレディーマック(これからGSE2社と書く)について“GSE are waiting an accident to happen”と述べたことから金融株が大きく下落した。市場は「an accident = 国有化」と解釈したようである。先週議会を通すのに「あなた方は政府が変わればお役目ご免だが、私たちには国民に説明する義務がある」などと同胞であるはずの共和党議員に言われたバーナンキとポールソンが可哀想に思える。口では警告していたものの、サブプライム問題の種を放置したのは間違いなく同氏だ。また、昨日は、MBA(米抵当銀行協会)が先週の住宅ローンが再度大きく落ち込んだことを発表している。 

 

 雇用と住宅問題という二つの問題は深刻であるということは誰もが語っていることで、異論はないことは述べてきた。しかし、1-3月期、4-6月期と金融を除けば米国の企業決算は悪くない。週末に日本株ストラテジーを纏めるつもりであるが、4-6月期の決算だけを見ればよっぽど日本企業の方が芳しくない。